HONDA CB1100R 1981y

HONDA CB1100R 1981y

(リード)

CBXのエンジン・パフォーマンスを越えて、115psの最高出力を叩き出した最速のモンスター・バイクがCB1100Rだった。CB900FIIのパワーユニットをベースに、ボアを64.5→70m mに拡大。ストロークを共通の69mmとした4気筒DOHCが搭載。

(本文)

 キャブレターは、900Fの32mmφに換え、CVの33mmφが4連装。6気筒のCBXよりもダイレクト感を伴った瞬発力が作り出されていた。パワーユニットの内容は、900Fとは大幅に換えられ、シリンダー・ヘッド外形、クランク・ケース、ミッションが共通といった程度で、出力系のパーツは全面的に変更されていた。

 開発を共同で行ったのはRSC。レース用のキットパーツを装着すれば、出力は135psにも跳ね上がる。これに対応するために、標準装備のオイルクーラーは900Fの3倍もの容量を確保。一次駆動のハイボチェーンも4分の1インチ幅を拡大して強化してあった。

 ベースとなったCB900F(901cc)と比べ161ccアップしたパワーユニットが実際にどのようであったのか、気にもなるところだ。が、常用範囲の使用を考えるなら、CB900Fのフラットで強力なトルク特性の方がベストとしか言いようがない。1100Rに求められたものは、より高次元でのマニアックな感動であって、一般的なレベルでの評価には耐え難い部分もあった。 

 1100Rのパワーユニットの少々荒々しい回転は、車体に振動という現象を与え、CBXの6気筒のスムーズさを改めて思い起こさせてくれた。しかし、1100Rはスーパースポーツというジャンルの頂点を極めるべく生みだされたものではなく、ホンダの全く新しいジャンルへの挑戦の現れだったとは言えないだろうか。レーサーRCBを彷彿させるスタイリングと、機能美を優先させたパーツが融合した公道レーサー的な存在感が強く印象付けられていた。クリップオン・タイプのハンドル、肉抜きで軽量化されたバックステップ、デュアル・ピストンのブレーキ・キャリパー、シングル・シート等々、レプリカの走りとなった貴重なモデルなのだ。

 セルモーターひと押しで目覚めるエンジンは、消音効果が高められた4into2のマフラーからでも、その活発なエキゾースト・ノートを響かせてくれる。スロットルの反応は900Fよりも軽々としており、適度にチューニングされた資質の確かさを感じさせてくれる。走り出しは、意外に軽いタッチのクラッチ・レバー操作と、低回転域からでも発生する図太いトルクのお陰で、外観から想像する気むずかしさもなくスムーズに行える。しかし、回転が上昇するに連れ膨れ上がってくるパワーを感じ、10,000rpmを越えても落ち込みのない出力特性には、感心させられる。

 1100Rの最もオイシイところは、やはり高回転域。900Fの限界点もさることながら、そこを越えてからの僅かな範囲にある。タンク回りを中心に発生するバイブレーションは、5,000rpmを越えてから次第にピッチも小さくなり、硬質感を伴ったものとなる。リジットマウントされたパワーユニットが、フレームに及ぼす影響をどのようにみるかは、このマシンには図られてはいない。パワーユニットの存在感を存分に味合わせてくれる。

 フロントの軽快性は、正直に言って・・余り無い。これは、CBXのハンドリングと比べて逆方向のセッティングが成されているせいか。トレールは共に120mm。キャスターはCBXの27.25゜に比べ1100Rの27.5゜と違いは少ない。重量バランスの違いから?あるいはタイヤの違いによるもの?正直に言って判断はつきかねる。が、このフロントの影響は接地感にも及び、少々悩まされる部分かも知れない。

 リアの滑り出しも要注意で、ビッグ・バイクに慣れないうちはコーナーリングは、慎重なアクセル操作に終始してほしい。900Fベースとは言え、まるで異質な存在感を担ったスペシャル・バイク。公道に舞い降りたRCBレプリカは、1982年にフロント回りの剛性感と安定性を高めて一新。1983年には出力を12 0psにアップ。一癖ある楽しいバイクだった。

CB1100RII 1982y海外ではプロダクションレースや耐久レースにまで使用された“ロード・ゴーイング・レーサー”と呼ぶにふさわしいモンスターマシン。’82モデルでは、走行性に寄与する部分で多くの変更点が挙げられる。フロントフォークのインナーチューブ径を37mm→39mmへと大径化。フロントのダブルディスクをベンチレーテッドタイプとし、ブレーキキャリパーのパッド等も変更。さらにアンチダイブのTRACも新たに装備。タイヤは、フロントを3. 50-19→100/90-18へ、リアを130/90-18→130/80-18へと変更するなど、レーシングタイヤの装着を可能としている。整流効果に優れるフルフェアリングやワンタッチで脱着可能なシングル用シートカウルなど、外観面に大きな変更点は見られない。

CB1100R 1983y ‘82のデビュー以来、多くの話題を提供してきたCB1100Rもこの年式で最終モデルとなる。出力は、115ps/9、000rpm→120ps/9、000rpmへと高められ、カワサキGPz1100と共にナンバーワンの実力を誇っていた。京浜CV33の4連装キャブは非常に良く調整されたもので、アクセルワークに対し、レスポンスは瞬時に行われる。レバー入力にやや力を必要とするブレーキのタッチは、アンチダイブに影響された印象からのもので、効きは十分に与えられている。アイドリング時からエキサイティングさせるエンジンの鼓動は、今のモデルには得られない魅力だった。

概要 車名:CB1100RD

形式:SC08

年式:1983年

販売台数:2122台

塗色:キャンディアラモアナレッドU×パールシェルホワイト

 (R124CU)         (NH121PA)

寸法 全長:2,200mm (E,F,G,U,D)

      :2,220mm (H)

    全幅:755mm

    全高:1,295mm

    軸間距離:1,490mm

    シート高:795mm

    最低地上高:140mm

    乾燥重量:233kg

    装備重量:不明

    燃料タンク/予備容量:26.0L / 4.5L

エンジン 形式:SC05E

エンジン形式:空冷 4サイクル

シリンダー配置:並列4気筒

弁形式:DOHC 4バルブ

ボア×ストローク(比率):70.0×69.0mm (0.986)

排気量:1062cm3

圧縮比:10.0:1

最大出力:120PS/9000rpm (D)

:115PS/9.000rpm (E,F,U)

:100PS/9.000rpm (G,H)

最大トルク:10.0kg-m/7.500rpm (E,F,U,SA,D)

:8.8kg-m/7.500rpm (G,H)

オイル容量:4.5L

潤滑方式:ウェットサンプ

エアークリーナー形式/容量:濾紙式/5.4L吸気バルブ:オープン15°(BTDC)

:クローズ35°(ABDC)

バルブ/ステム径:φ26.0mm/5.5mm

リフト量:9.0mm

クリアランス:0.08mm(+0.05mm、-0.02mm)排気バルブ:オープン40°(BTDC)

:クローズ10°(ABDC)

バルブ/ステム径:φ22.5mm/5.5mm

リフト量 :8.5mm

クリアランス:0.08mm(+0.05mm、-0.02mm)

エンジン重量:92kg

アイドリング回転数:1000±100rpm

吸気系 キャブレタータイプ:CVタイプ,口径33mm

型名:VB53C(E,F,G,U,SA,D)

:VB53D(H)

パイロットスクリュー戻し回転数:1-3/4回転

フロートレベル:15.5mm

フレーム 形式:ダブルクレードル

サスペンション形式/トラベル(F) :テレスコピック(φ39mm、正立式)/140mm

(r) :スイングアーム/105mm

サスペンション調整機能 (F) :伸び側減衰力:3段

(r) :伸び側減衰力:4段 圧側:3段 プリロード:5段

キャスター/トレイル:62゜/ 118mm

フロントフォークオイル容量:380cm3

タイヤサイズ :(F)100/90V18

(r) :130/80V18

ホイールサイズ :(F)2.50×18

(r) 3.00×18

タイヤ空気圧 通常走行(F):2.50kg/cm2

(冷間時) (r) 2.50kg/cm2

サーキット走行(F)2.50kg/cm2

(r) 2.9kg/cm2

ブレーキ形式(F)油圧式ダブルディスク

(r)油圧式シングルディスク

ディスクローター:(F)φ296mm ベンチレーテッド

(r)φ296mm

キャリパー :(F)ピンスライド・片押し式2ピストン(φ32.03mm×2)

(r)ピンスライド・片押し式2ピストン(φ27.0mm×2)

キャリパー取り付けボルトピッチ:(F)124.0mm

(r)171.5mm

マスターシリンダー径:(F)φ15.870mm

(r)φ15.870mm

出力伝達系 クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング

変速機:5段リターン 常時噛合い式変速パターン:左足操作 1ダウン/4アップ

1次減速比:2.041 2次減速比:2.294 17/39 (E, F, G, H, U, D)

:2.471 17/42 (SA)

変速比 1速:2.533

    2速:1.789

    3速:1.391

    4速:1.160

    5速:1.000

ドライブチェーン:DID 50 ZL or RK 50 LO

電装系 点火方式 :フルトランジスタ

点火タイミング: "F-1"マーク10°BTDC at 1.000rpm

全進角:38°BTDC at 3.600rpm

始動方式:セル

セルモーター出力:0.7W

ゼネレーター:3相 AC発電機

  :0.24kw/5.000rpm

バッテリー:12V-12AH (オプション:12V-14AH,12V-9AH)

スパークプラグ:標準DR8ES(E, F, G, H)

   :X27ESR-U(E, F, G, H)

   :D9EA(SA, U, D)

   :X27ES-U(SA, U, D)

オプション:X31ESR-U(E, F, G, H)

レース専用:D10EA,(NGK),X31ES-U(ND)

スパークプラグ:ギャップ0.6-0.7mm

点火順序:1-2-4-3

ヒューズ:15A,30A

灯火類 ヘッドライト:60/55w H4バルブ

テール/ストップランプ :5/21w (E, F, G, H)

    :8/23w (U, D, SA)

ウィンカー:21/21w (E, F, G, H)

:23/23w (U, D, SA)

スピードランプ:3.4w

タコメーター:3.4w

ニュートラルライト:3.4w

ウィンカーインジケーター:3.4w

ハイビームインジケーター:3.4w

ポジションライト:4.0w


風倶楽部

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