VRXRoadster 1995.08

VRX Roadster

 Vツインの400ccネイキッドスポーツのデビューといえば、ホンダとしては「ブロス」以来のこととなる。パワーユニットは、現行モデル「スティード」のものを、外観を含めリファイン。エアクリーナーの内部構造をシンプル化して吸入効率を高め、マフラーの延長化や容量アップ、排気効率の向上を図る等して3psのパワーアップを果たしている。しかし、今回のVRXに対して、このパワーアップは特に積極的な行動ではなかった。寧ろ、低回転時に起きる車体の揺れや乗り味を演出するための心地よいパルス感を創り出すことの方に主眼が置かれていた。それは、現行のスティードよりも慣性力を高め、ハンドルの振れに関してもハッキリとした形で表されている。スーパースポーツモデルに採用されている4気筒のように、加速Gが連続して発生するパワーユニットに対し、大きめの減速Gを生み出したVツインのユニットには、特有の鼓動が発生するのだ。それは、クランク2回転毎に発生する加速最大Gに対し、直前に発生する減速Gによって生み出される独特のパルス感が発生させるものと考えられている。しかし今日まで、ことバイクに関して、走行上の振動は決して好むべきものではないとされてきた。高速走行における微妙なトルクの変動は、危険極まりないものでもあった。それを乗りこなす勇気を称えられる頃もあった。が、今やあらゆる面で技術革新が行われ、単にパワーユニットのみの個性で、運動性能が犠牲になるということもなくなった。寧ろ、安心して個性を楽しめる状況になったとも言える。フレームやタイヤの技術力ばかりでなく、各セットアップに関しても、総合的な技術力が十分にカバーしている。

 では、実際にこの振動が及ぼす高回転時の影響はどうか。高回転になるにつれ、加速Gとともに減速Gも同時に増大。しかし、エンジンの回転慣性力が大きくなり、不規則なクランクシャフトの角速度変化も減少。2回転毎に突き出しした減速Gは、1秒間に約40回以上発生するとパルス感も感じられなくなる。つまり、VRXのパワーユニットには、使用する回転域に従って変化する微妙な味付けが成されているのだ。トップギアで80km/h以下の走行時にパルス感が得られるようにギアレシオを設定。スティードとは、3速(1.595→1.545)、4速(1.272→1.217)に加え、一次減速比は2.058と共通ながら二次減速比を2.750→2.812と設定変更も行っている。通常スピード域でも単調で飽きるということはなくなった。高速域でのみ楽しみを追求されたバイクとは根本的に異なり、普段の足としてもツーリングにも、自在に操れるつき合い易さがこのモデルのモットーだ。

 V=Vツインエンジン、R=ロードスポーツ、X=無限大の可能性をコンセプトネームとした異色のネイキッドだ。が、この硬派なスタイリングは一部のユーザーに圧倒的な支持を得ながらも多数派の志向に結びつくことは無かった。


エンジン:水冷4サイクルSOHC3バルブV型2気筒 排気量:398cc ボア&ストローク:64×62mm 圧縮比:9.8 最高出力:33ps/7,500rpm 最大トルク:3.5kg-m/6,000rpm キャブレター:VDD0 始動:セル 変速機:5段 全長:2,235 全幅:760 全高:1,105 最低地上高:165 シート高:770mm 乾燥重量:190kg ブレーキ:F・310mmフローティングディスク・シングル R・240mmシングルディスク タイヤ:F・120/80-17 R・140/80-17 キャスター:28°25′トレール:113mm 価格:52万9千円 発売:1995年8月5日

風倶楽部

バイク全般のヒストリーが中心となります。バイク好きの人たちが気軽に閲覧できるようにオープンな状態を保っていきたいと願っています。アメブロに掲載してきた記事が多くはなりますが、補足を加えていきます。

0コメント

  • 1000 / 1000