YAMAHA TX500/500B 1973y
1973年4月、XS650EがTX650に名称を変更すると共に、シリーズの強化を図る目的で新感覚のニューモデルが発売されている。TX750/TX650にしろ、バーチカル・ツインと言うことだけが唯一の共通点。同じOHCとは言え、シリンダー・デザインも異なり、全く別物の印象で受け入れざるを得なかった。しかし、TX500に関しては、TX750のスタイリングを取り入れて兄弟車であることを強く印象付けて上手にアピールしている。
TX500に特徴付けられているのは、ヤマハ初のDOHCが採用されていること。量産型のモデルとしては、ホンダCB450/カワサキ900Z1/カワサキ750RS(Z2)に次いで4番目のモデルということになる。意外なことに、CR110やCR93でツインカム(DOHC)に先陣を切ったホンダが、DOHCを用いることなく多気筒化に向けてOHCで挑んだあたりは、単にコスト上だけでの問題としか解釈できない。カワサキ750RSがデビュー時の1973年に41万8千円。ホンダCB750fourK2が38万5千円。ヤマハは、TX750に38万5千円を設定している。Z2のデビュー以降4年間にも渡りホンダは750ccにOHCを採用したままで対抗していたことを考えると、DOH Cの採用がそんなにも急がれていた状況とは考えられない。
ヤマハが、TX750にでなくTX500に御社初のDOHCを採用した腹づもりは、一体何だったのだろうか。ヤマハは、当時の多気筒化のブームの中、TXシリーズに共通する2気筒を選択して、マルチに対抗し得るパワーユニットの採用を決めた。「4気筒では幅が広すぎる・・」「2気筒で4気筒並の性能を・・」「2気筒で4気筒並の振動に・・」と言うのが狙いだった。 TX500は、750や650に採用された360度とは異なる180度クランクを採用している。バーチカル・ツインの味を強調することなく、高回転域を求めるべくショートストロークの設定も与えられている。又、あくまでもコンパクト化が条件の採用だった2気筒に、更にコンパクト化が図れるようにと潤滑系を改良。ミッションをオイル・バス方式とし、クランク・ケース下部に滴下したオイルを戻しポンプを用いてミッション・ケースに送り込んでいる。送りポンプは、従来方式に従いクランクシャフトやコンロッド、カムシャフトやロッカーアーム系へと潤滑する。これによって、オイルの劣化を遅らせ、回転部分への抵抗を減少させるという、非常に凝った潤滑方式を採用している。
注目するDOHCは、CB450のセンター・カム・チェーン方式とは異なり、右側に置いたサイド・カム・チェーン方式。バルブは、DOHCとしては国内初の1シリンダー・4バルブを採用した8バルブ方式。バランサーを内蔵した最新機構が自慢だった。直接的なライバルはと言うと、ホンダCB500fourが挙げられる。が、TX500の発売と時期を同じくしてCB550fourにグレード・アップ。CB500Tに関しては、いささか基本設計を古くしてしまったので対比するには酷だったかも知れない。
4サイクルのスポーツ・モデルと言うことで、CB500fourを対比させると、このTXの特徴付けがハッキリと示されることとなる。 方や「モーターの様に・・」とも言わしめたスムーズな4気筒に対して、2気筒なりの出力特性が体感できる。エンジン・レスポンスは鋭く、特に6,000pm辺りを過ぎてからは一段と、加速度的にパワーが立ち上がていくのが楽しめる設定になっている。180度点火のクランクと言うことで、パワーの繋がりがややギクシャクして感じる。が、TXシリーズは、三車三様の出力特性が楽しめると言う点で興味深いものがある。
TX500のトルク特性は、意外にもフラット。2,000rpm時に最大トクル値(4.5kg-m/6,500r pm)の67%となる3.0kg-mを稼ぎ出す安定性がもたらされているし、トップ・ギアの5速で4 0km/hの低速走行も可能にはなっている。しかし、TX500には、もっとダイナミックで躍動感溢れる乗り方が似合っている。前後のダンパーも堅めのセッティングで、出力の発生に応じて敏感に反応するように仕向けられている。ブレーキは、フロントにRD系で使用しているものと同じタイプのディスク。出力特性のダイナミックさに比べ若干の頼りなさを感じる。TX500は、この後4年後にデビューするGX750(1977y)に先だって、1976年にスタイルを一新、名称もGX500として生まれ変わっている。前後ブレーキにディスクを採用。走りの印象をより一層際だたせている。
TX500 1975y
500ccクラスで最も軽く、取り回しが楽なことが、このモデルの好評となった点であろう。ハイスピードのコーナリング性能も高く、マルチとは異なる180度クランクのDOHC8バルブ・ツインの独特な歯切れの良い排気音も魅力だった。ツインとは言え、どちらかというと高回転域を重視のスポーツモデルで、高速でも安定した操縦性が与えられている。’7 5年モデルでは、エキゾーストパイプを左右で連結、出力特性をややマイルドにして、中低速域でのトルク特性の向上が図られる。が、燃費の向上は得られず。
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