KAWASAKI ZXR400/400R1989
ZX−4をベースに開発されたワークスF 3モデル「ZXR−4 」の技術がフィードバックされている。カワサキはレプリカに関して消極的とも思われていた。1983年のKR 1000以来レースからは撤退。1987年のZXR−7のレース復帰とて、あくまでも技術革新の為の課題研究とさえ言われていた。国内のサーキットでは、ワークスとは言え決して目立った存在ではなかった。しかし、サーキットに復帰したカワサキにとって不満だったのは、自らのマシンのポテンシャルよりも、カワサキのマシンの影さえうかがえなかったことだ。大挙してエントリーしてくるプライベーター達が、カワサキ・ワークスの一挙手一投足に注目している熱い視線も関係者は感じていた。レースに情熱を注ぐ若者達が、かつてのカワサキモンスターのパフォーマンスを忘れてはいなかったのだ。期は熟したと判断したカワサキは、'88年から一気に形成を整えた。「'88鈴鹿4耐」でのZX−4のSP400クラスの優勝も力となったことは確かだ。ZXR400/400 Rのデビューは、カワサキにとっての新たな挑戦への幕開けとなった。ZX−4と共通のボア&ストローク(57 ×39 mm) を採用。新気を送り込むカワサキクールエアシステム(K−CAS)を新たに導入。キャブレターをCVKD30→32と大径化を図る等、数値上には現れない出力特性の向上を図った。ピストン頂部やヘッド燃焼室の形状を変更。スキッシュクリアランスを極限まで縮小し、強力なスキッシュ流を得て燃焼効率を高めている。圧縮比を11.5→12.0に変更。一種過激とも思えるパワーフィールを与えていた。フレームはEX−4同様の形状と同寸のメインフレームパイプ(120×30mm) で構成。キャスター角も共通の24°で設定されている。トレールは87→85mmに変更されている。が、ホイルベースも共通の1395mmに設定されている。スイングアームは新たにスタビライザーを設け強化したアルミ鍛造製となった。FX−4のフレキシブルな効果を持ったフロントサスとは異なり、動きに今ひとつシャープさを欠いた'89 ZXRの倒立サスも、翌年には改良されシャープさも増している。排気バルブのタイミング変更もあり'90 ZXRは更に扱い易くなった。ZXR400に対し400 Rは、ミッションのギアレシオを変更〔1:2.846 → 2.294 2:2.055 →1.894 3:1.631 →1.647 4: 1.380 →1.450 5:1.240 →1.333 6:1.111 → 1.240 /一次減速比2.195共通、二次減速比 3.000 →2.750 〕し、FRP製のシングルシートが与えられたプロダクションレース仕様。ストックのままでも速さは一級品。サーキットにライムグリーン旋風が巻き起こったのは言うまでもなかった。
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