HONDA CBX 1978y

HONDA CBX 1978y

(タイトルリード)

当時、空冷最大級の6気筒を並列配置したモンスター・バイク。最高速度225km/h、0→400m加速11.65秒は勿論、当時世界最速のデーターとなった。

(本文)

 スペックは無論のこと、やはり視点を釘付けにさせたのは巨大な6気筒のシリンダーだった。「これぞエンジンに有りき!!」と強調するように、アルミの地肌を燦然と輝かせたツイン・カム・ヘッドをのぞかせ、整然と配置させたエキパイが更に印象を強めている。前傾33度に設定されたパワーユニットは、プラグまわりの冷却とライダーの膝との干渉を避けての配慮が成されたもの。総計24のバルブは、センターで分割されたそれぞれ2本のカムシャフトによって3気筒ずつが支持されており、官能的とも言えるツイン・カム・サウンドを、とても刺激的なものに作り上げている。

 アクセルワークに応じてリニアに反応するレスポンシブルな性格も持ち合わせて、スポーツライクなライディングが楽しめる。エンジン幅は、CB750に比べ50mm広いだけの全長558mm。一体式クランクシャフトを持ち、7個のプレーンベアリングにより支持され、ビッグエンドはコンパクト化。更に、両端のウェブ幅を詰める等で徹底したコンパクト化が図られていた。

これは、実際の試乗時にも感じることで、車体そのものも750ccよりも更にコンパクトな印象に思えるほどに仕上げられている。気負うことなしに1リッター・バイクをコントロールできるようにとの計らいが、このモデルにはある。

 軽量化という面でも細心の工夫が見られ、ハンドルやステップ、ステアリング・ステム、チェンジ・ペダル、ブレーキ・ペダルにはジュラルミン製が奢られている。軽さに関しては、パーツ類にばかりでなく操作性の面でも考慮。意外に短めのホイルベース(1,495mm)や重心位置を高めの設定に置くなどして、意識的に作り出している。

 これは、センタースタンド一つとっても言えることで、使い勝手を好くする工夫が随所に見受けられる。走りに関しても、リッター・バイクであることを忘れさせてしまうほどの軽快性がある。伊豆スカイラインのような小さなコーナーの連続する峠道で、750ccクラスにも勝ると思える程の軽快性が堪能できる。

 乾燥重量249kgに加えフルタンク20リッター以上を抱えてのライディングとは想像できない位に素晴らしい。但し、唯一気になるのは足着き性。805mmというナナハン並のシート高ではあるのだが、巨大なエアクリーナーやバッテリー・ケースに邪魔されて、著しい干渉を受けてしまうのが唯一残念な部分だ。ハンドルは、ヨーロッパ向けのコンチハンドル(760mm幅・1、070mm高)とアメリカ向けアップハンドル(885mm幅・1、175mm高)の2タイプがあり、小柄なライダーには寧ろヨーロッパ向けの方がポジションはマッチするだろう。

 スタートは、同じ年に発売されたDOHC採用のCB750Kと比較しても、寧ろ容易に感じる。低回転域からでも有り余るトルクが豊かな特性を発揮してくれるからだ。走り出してしまいさえすれば、コンパクト設計のおかげで、操作に難儀な思いをすることはない。コーナーリングのきっかけを与えるにしても、フロントは軽快性を失うことはない。コーナーリング中にパワーONしても、特にタチが強いといった印象は受けない。寧ろ、常識の範囲にあるパワーを利して旋回性を高めていく…と言った乗り方が合っている。

サスペンションは、リアのFVQダンパーに関して、ややハードな印象を受けるかも知れない。キャブレターは、ケイヒンCVキャブ28mmφの6連装。左から3番目のキャブにだけ加速ポンプを設け、ここから各キャブレターを介して6シリンダーに濃いめの混合気が送り込まれる。5,000rpmを越えた辺りからパワーが盛り上がって、6,000rpmからは44度の挟み角を持ったバルブが軽快に踊り出す。

 230km/hという最高速度とゼロヨン11秒台のデーターを疑うものは何ものもない。歴代唯一の空冷6気筒が、走りでもそのスポーツ性を極めたのは言うまでもない。が、その特徴ある個性をオーソドックスなフォルムでスポイルさせてしまうこととなったのは、本意ではなかったのだろう。

 1981年、サイドバックや大型のカウルを設けツアラーに変身してしまったCBXは、リア・サスに最新のプロリンクを得ても、どこかよそよそしいもののようにも思えた。CB1100Rに主役の座を明け渡してしまったCBXは、1982年モデルを最後にラインナップから外された。シルキー・タッチの滑らかさといい、6気筒ならではの格別のツイン・カム・サウンドは、忘れられない感動を残していった。


CBX 1978年型

エンジン

空冷並列6気筒DOHC24バルブ

排気量・・・・・・・・・・・・・・・・・・1047cc

内径×行程・・・・・・・・・・・・・・64.5㎜×53.4㎜

圧縮比・・・・・・・・・・・・・・・・・・9.3

最高出力・・・・・・・・・・・・・・・・105ps/9000rpm

最大トルク・・・・・・・・・・・・・・・8.5kg‐m/8000rpm

燃費・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23km/ℓ

車両寸法

全長・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2240mm

全幅・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・780mm

全高・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1145mm

軸距・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1495mm

地上高・・・・・・・・・・・・・・・・・・150mm

車両重量・・・・・・・・・・・・・・・・247kg

変速比

1速・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.438

2速・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.750

3速・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.391

4速・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.200

5速・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.037

減速比

1次・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.269

2次・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.333

始動方式・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・セル

点火方式・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・トランジスタ

タンク容量

ガソリン・・・・・・・・・・・・・・・・・20ℓ

オイル・・・・・・・・・・・・・・・・・・5.5ℓ

走行装置

キャスター・・・・・・・・・・・・・・・62.5度

トレール・・・・・・・・・・・・・・・・・120mm

タイヤ(前)・・・・・・・・・・・・・・・3.50‐19

タイヤ(後)・・・・・・・・・・・・・・・4.25‐18

風倶楽部

バイク全般のヒストリーが中心となります。バイク好きの人たちが気軽に閲覧できるようにオープンな状態を保っていきたいと願っています。アメブロに掲載してきた記事が多くはなりますが、補足を加えていきます。

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