VT750C 1997y
'40年代のアメリカン・ロードモデルを強く意識させたレトロルックのチョッパーモデルが誕生した。ホンダとしては、輸出向けの「CA125レブル」を省いて国内にフルラインナップさせたアメリカンを更に充実させるばかりでなく、決定的なシェアの確立を計りヒット商品となるべくモデルの開発を行った。
750ccクラスのアメリカンモデルには現在、ドラッグレーサーをイメージとして作り上げた「MAGNA」をラインナップしている。が、パワーユニットにロードスポーツ的な出力特性が備わっているが為に、幅広い用途を望むアメリカンユーザーの支持を決定的に得るまでに至っていなかった。ユッタリとした心持ちでスロー走行を楽しめるものではなかったからだ。マイペースなライディングを・・・とは言っても人は様々で、実際に個々の感性をどんな状況にあっても満足させることなどできない。ましてや、モーターサイクルにあっては、交通事情や状況に左右されることが多く、ライダー自身が状況に合わせた判断で適切にコントロールしきれるものであることが望まれもする訳だ。
VT750Cは、先に発表された「SHADOW(VT1100C)」とコンセプトを同じくして、これまでの国内モデルにあった「STEED400/600」とは異なる趣を見せている。スタイリングはVT1100C2 A.C.E.を踏襲しつつも、よりエレガントに仕上げれ、縦長のテールランプや胴長のライトナセルでクラシカルな趣は更に強められている。2into1のエキゾーストもカスタムチョッパー的なアレンジで楽しめる部分でもある。各パーツがそれぞれに趣をもって丁寧な造り込みがなされていることで、ユーザーにあってはそのままでもカスタムメイドの雰囲気を存分に味わえることができる。が、アメリカンモデルのユーザーにあっては、オリジナルなカスタムに仕上げたいと望む向きも多く、スタンダードな設定のモデルのデビューを望む声もあがるのではないだろうか。VT600が、国内では免許制度の制約を受けて販売が不調ではあっても、ヨーロッパにおいては女性やヤングユーザーの支持をしっかりと受けている以上、このVT750C2は、スペシャルモデルとしての色合いが濃く反映されてしまうことも考えられる。質素で堅実なヨーロッパのライダーに、どういった反響が起こるのか気にかかる。
では、国内市場への可能性はどうだろう。大型免許が取得制度に緩やかな判断基準を新たに設けたことで、教習所が受け入れ体勢を整え次第、各所で時間単位制で手軽に取得が可能になり、大型車の市場は確実に拡大し向上するに違いない。だが、税制面での有利さを600ccでは持たない日本市場にあって、このVT750C2は、いずれ中心的な存在のモデルとなるだろうと予測される。今やH.D.を越える大排気量のアメリカンモデルを生産する日本では、750ccは大型車への入門としてだけではなく、ベーシックな基準として扱われるようになるのではないだろうか。
パワーユニットは、STEED600/400と共通のSOHC3バルブ・52度Vツインのツイン・スパーク(1シリンダー・2プラグ)仕様。クランクケースにVT600Cをリファインして採用する以外は、全く新しい基準を設けて設計されたエンジンである。ボア×ストローク値をVT600Cの75×66mm→79×76mmとしたことで、低回転時に発生するトルク感は高まり、マスの増強を図ったクランクシャフトの影響もあって、しっかりした鼓動が伝わってくるはずだ。超高回転に慣らされたレプリカのマルチ派には、馴染みのない振動にカルチャーショックを受ける人もいると思う。が、すぐに好ましい程度の味わいと感じ取れるはずだ。VT1100C2のようにド迫力ではないにしろ、加速時の出力感がVT600以上に高められていると言う。
軽いタッチで確実にコントロールされるワイドレシオの5速、排気音や排出ガスの低減化を果たしながらもパルス感を高められた2into1のエキゾーストシステムなど、操作性の向上と共に環境にも優しい心配りが感じられる。重量は、VT1100C2の31kg減の230kgと、CB1000SuperFourの235kgを下回るロードスポーツ並。意外とも思える軽快感が備えられているとも言う。
フロントフォークは、クロームメッキを施されたフルカバードタイプのφ41mmで、130mmのアクスルトラベルを有し、4mm厚のフォーク・スタビライザー・プレートがフェンダー裏に装備されている。ブレーキは。296mmのローターにデュアルピストンのキャリパーがセット。
リアのダンパーは、フルカバードタイプでコンベンショナルな2本組。90mmのアクスルトラベルと5段階の調整が可能となっている。リアブレーキは180mmのシングル・リーディングトレーリング・ドラム。
ヘッドライトは大口径170mmを有し、60/55Wのハロゲンバルブを用いている。余すところなく徹底的に仕上げられた、メーカーによるカスタムチョッパーをオリジナルのまま乗るも良し、ユーザー個々のアレンジにより楽しむも良し、今後期待の持てる楽しみなモデルのデビューとなった。
ホンダVT750 C2 Shadow 1997y.3.21
エンジン:水冷 4サイクルSOHC 3バルブV型 2気筒 総排気量:745cc ボア&ストローク:79×76.0mm 圧縮比:9.0 最高出力:45ps/5,500rpm 最大トルク:6.7kg-m/3,000rpm 始動方式:セル 変速機: 5段 全長:2,455 全幅:945 全高:1,105 地上高:140軸間距離:1,615 シート高:695mm 重量:228kg 燃料タンク容量:14 タイヤサイズ:(f)120/90-17 (r)170/80-15 価格:66万 9千円
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