YAMAHA FJ1100 1984

YAMAHA FJ1100 1984y(→FJ1200 1985/FJ1200/1200A 1991)

(リード)

現在でも根強い人気を保ち続けるFJ1200の初代モデル、FJ1100が登場したのは1984年。折りしも日本ではレプリカブームが勃発し、バイクのメカニズムが加速度的な進化を遂げようとしていた、その黎明期にあった。


(本文)

 それまでのヤマハビッグスポーツの旗艦は、1978年にデビューしたXS1100と、その後継モデルにあたるXS1100S、ミッドナイトスペシャルが担っていた。ツーリングスポーツやアメリカン系については、新しい設計が施されたモデルが適時登場してきてはいたものの、走りを楽しむためのモデルとしては、XS1100のラインがそのまま連続していたわけだ。このXS1100も、もともとは3気筒エンジンのXS850/7 50、そして発展系のショーモデルXS1000に基本を持つものであったから、いくらお化粧直しを施したところで、もはやその基本設計の古さは歴然としていたし、ゴージャス指向に流れていったのも当然だろう。

 FJ1100は、XS1100系とは設計がまったく異なる、新時代のスポーツモデルとして登場した。とはいっても、国内モデルののようにレプリカ色が強いモデルではなく、空力特性に優れたカウリングときわめて高い直進安定性、巡航性能を持ちながら旋回性も高いという、スーパースポーツとツーリングスポーツの中間的な性格を狙っている。これはもちろん、FJの主なマーケットであるヨーロッパのライダーたちが求める、ビッグバイクの理想像に応えようとしたからにほかならない。

 大きなシリンダーブロックを持つ空冷DOHC4気筒16バルブエンジンは、軽快な吹け上がりを狙ってショートストローク化され、125psの出力と9.8kg-mを発生するトルク値の堂々たるスペックを発揮していた。低回転域から太いトルクを発生するとともに、その力強さを高回転域まで維持する、という広いパワーバンドと、ジェット機的な回転フィーリング、空冷ながら熱ダレやオイル消費が少なく、長距離をコンスタントに高速で走破できる安定性などを重視した名エンジンで、10年以上を経過した後にも一線級の実力を保ち続けている。また、ヤマハのお得意メカであったシャフトドライブを取り止め、よりスポーツライディング向けのチェーンドライブが採用されているのを見ても、このバイクが時代のターニングポイントになったことを感じさせる。

 決してコンパクトとは言えないこのエンジンを搭載するのは、ラテラルフレームと呼ばれる幅の広いクレードルフレーム。通常のフレームに大きなエンジンを搭載する場合、どうしても重心位置が高くなってしまうのだが、シリンダーの外側にメインチューブを配し、エンジンをガソリンタンク部分までめり込ませるように搭載できるラテラルフレームは、十分以上の強度と低い重心位置の達成、バンク角の確保に大きく貢献している。

 また、エンジンを比較的高い位置にマウントできる利点を活かし、前後ホイールに16インチの小径サイズを採用。1、490mmの長いホイールベースながら素直なハンドリングを確保し、なおかつシート高を下げて乗りやすさを向上させた。さらに、この下がったシート高と低めのハンドルのとのマッチングもよく、低めのカウルでもプロテクション効果を有効に発揮しつつ、快適なライディングポジションを確保。こう書いていくと、すべての部分が絶妙にバランスし、倍倍ゲームで美点を増やしていることがお分りいただけるだろう。

 さすがにボディの横幅はかなり広がってしまうものの、ビッグバイクとは思えないほど乗りやすく、走りのシチュエーションを選ばない寛容性の高さは出色の出来。実用的なコミューターとして乗りこなすライダーも多いのだ。翌1985年には、さらなる逞しさを求めて排気量を1、188ccに拡大、130psのパワーと11.0 kgの最大トルクを得ている。その後はカラーリング変更を経ながら、1991年にはカウルの整流効果を大幅に向上させた熟成モデルを発売。初のABS装着モデルであるFJ1200Aやパワーを97psに抑えた国内仕様もリリースされ、未だに支持を維持し続けている。


FJ1200 1985y

 ヤマハのフラッグシップモデルとして1984年にデビューしたFJだったが、1年後のパリショーでは、排気量を1100→1200にアップしての登場。ヤマハの空冷としては最強のパワーユニットを搭載。フルパワー130ps/9、000rpm、11.0kg-m/7、500rpmのスペックは、水冷化のライバルモデルにも引けを取らない内容だった。FJ1100のストロークはそのままに、ボアを74mm→79mmへとスープアップ。排気量を1、097cc→1、188ccに拡大。FJ1100で高い評価を受けたラテラルフレームはそのまま。リアのリンク式モノクロスサスペンションは、リンク機構にニードルローラーベアリングを採用し、作動性の向上も果たされている。なにも意識して空冷最強を図ったわけではないだろうが、水冷化へのユニットの転換が頻繁となっていた頃でもあり、ロードスポーツモデルとしてのオーバー750に未だ水冷を持たぬヤマハとしては、排気量の拡大で対応するのが最善の策だったのかもしれない。実際このモデルは、広いパワーバンドとフラットな出力特性で、ハイパワーモデルを意識せずにコントロールできる点が良かった。当時で、最大トルク11.0kg-m/7、500rpmというのは、V-MAXの12.4kg-m/7、500rpmに次ぐビッグデータで、ゼロヨン10秒台前半も確実という駿足ぶりも圧倒的だった。FJ1100からスタイリング面での大きな変化はなく、外観ではウインカーをビルトインしたフェアリングと、エッジをより強めたアンダーカウルがニューデザインとなっている。内容面での変更は、トランスミッションの見直しにより、シフトフィーリングを向上。また、フューエルタンクのリザーブスイッチを電気式とし、切り替えスイッチをフェアリング内の左上部に配置。燃料が規定量以下になると自動的に燃料切れ状態となって、ライダーに給油を促し、切り替えも手元で行えるようになっている。その他、エアプレーンタイプのタンクキャップ、左右セパレート式のグラブバー、ニューデザインのテールカウル、デジタル時計の新装備など、イクイップメントの変更は細部に及ぶ。


FJ1200/1200A 1991y

 防風効果に絶大な威力を発揮するフェアリングで、疲れ知らずのクルージング性能と、大柄なボディに似合わない扱いやすさで人気が高かったFJ1200も、ついにこの年、国内リリースとなった。総排気量1188ccのパワーユニットは、このクラスのスポーツツアラーには珍しく空冷エンジンを採用しているが、オーバーヒートなどのウイークポイントは皆無。高剛性のラテラルフレームと、ホイールベース1、500mmの重量級ボディに抱え込まれたエンジンは、どんな長距離走行をもものともしない、たくましさと頼りがいにあふれている。1200Aでは国内初のアンチロックブレーキシステムを装着する。

風倶楽部

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