YAMAHA V-MAX 1984

YAMAHA V-MAX 1984y 

(リード)

国内でも爆発的なブームを巻き起こしたV-MAXは、アメリカンというカテゴリーに新風を吹き込み、現在大人気のドラッグモデルというラインを築き上げた記念碑的モデルだ。バイクというより化け物マシン、怪物と形容するほうが当たっていそうだし、グロテスクと表現しても間違いではないだろう。もちろん、ここで言うところのグロテスクとは悪口ではない。機械製品の枠を超えた、有機的物体のイメージからくるものだ。

(本文)

 V-MAXを初めて目にした者は、誰もが驚きを覚えたに違いない!巨大きわまりない水冷V4・1198ccエンジンは、もともとは大陸ツアラー・XVZ12TDベンチャーローヤルに搭載されていたもの。図太いトルクと落ち着いたタッチで静々と回り続ける、いかにもツアラーらしいエンジンだったのだ。それが、V-MAXに搭載されるやいなや145psという暴力的なパワーをひねり出し、極太のリアタイヤを空転させまくるのだから、エンジンセッティングとは奥が深い。

 後輪駆動方式はベンチャーローヤルにも使われているシャフトドライブだが、これはメンテナンスフリーをうたうというより、チェーンでは長持ちしないための装備かもしれない。とにかく、スロットルをひねった瞬間に制御困難に陥るほどの馬力が炸烈し、250kgを越える巨体は、まるでジェット戦闘機のような猛烈な勢いで加速を始める。ライダーはというと、振り落されないようハンドルにしがみついたまま硬直するのが精一杯。

 ゼロヨン加速はなんと10秒台だ。この大パワーを生み出しているのは、シリンダーバンク間に挟まれたキャブレターと、そこからラッパのように伸びたダクトを持つVブーストシステムだ。低中回転域の強大なトルクと高回転でのハイパワーを両立させるために生まれたこのシステムは、中低速域では1気筒あたり1個のキャブレターが給気を受け持ち、高回転になるとバタフライバルブが開いて、2つのキャブレターが大量の混合気をシリンダーに流し込むように働く機構。大量の混合気を食わせるため、うっかりすると燃費がリッターあたり5kmほどになってしまう場合もあるものの、そんな常識的な欠点はV-MAXにとってまったく問題とはならない。排気量の割に燃料タンク容量が15リッターと少なく、しょっちゅうガソリンスタンドのお世話にならなければならないのはご愛敬だ。ちなみに、通常ガソリンタンクがある部分はダミーカバーになっており、カバーの前方には小さいタコメーターと水温計、インジケーターがおさまっている。

 巨大なエンジンがひねり出す巨大なパワー。ではボディも巨大かと言うと、それはたしかにその通り。ただし、これだけのゴツさを持ちながらまだ剛性は十分とは言えないらしく、フル加速中や最高速付近ではまっすぐ走るのも難しいほど。さすがにブレーキにはベンチレーテッドトリプルディスクが採用されているため、止まらなくて危険ということはないが、それでも超高速からフルブレーキングをかけるには勇気とテクニックが必要。

 サスペンションもこのボディとパワーには必要最小限のようだし、もちろん軽快なコーナリングとは無縁の世界。渋滞路などでは巨体がつっかえてすり抜けもままならない。ツーリングにもスポーツランにもチョイ乗りにも不向き、ただ直線をフル加速するのみ、という乱暴なマシンではあるが、血の気がひくような加速感をいちど味わってしまうと、他の部分などはどうでもよくなってしまう。すでにこれ以上性能を上げる必要性もないため、2代目へのチェンジ時点で前後ディッシュホイールを取り入れたほかは、カラーリング変更が何回か行なわれたのみ。ただし、1993年に発売された国内モデルでは、特徴的なVブーストメカが外され、パワーも97psと大幅にダウンしてしまった。乗りやすさこそフルパワー仕様より向上しているが、そこにはV-MAXのアイデンティティを見ることはできない。残念なことだが・・・。同デザインの別モデルと考えた方がいいかもしれない。


V-MAX 1990y

 海外向けのV-MAXは、逆輸入車として日本でも高い支持を集めていたが、’90年にいよいよ国内リリースとなった。輸出用ではVブーストシステムが採用され145psの大パワーを得ている。国内仕様では、このVブーストシステムが外され、97ps/7、000rpmとパワーダウンを強いられる。が、実際のところ、Vブーストシステムが与えられているにせよ、国内でその恩恵を体感するには、かなりの制約がつきまとうのも事実。国内仕様といえども、暴力的なまでの加速感は健在だし、アクセルコントロールがマイルドな分、走りに集中できる。プラス思考に考えれば、馬力規制もそれほど気にする必要はないと思うのだが・・・。さて、’84年のデビュー以来、大きな変更を受けることもなく、熟成度を高めてきたV-MAXだが、現行モデルでは、フロントのブレーキシステムを従来のφ282mm・ベンチレーテッドディスクから、φ298mmのフローティングタイプに変更。もちろん、制動力/効き味ともに現行モデルに分がある。フロントフォークのインナーチューブもφ41mm→φ43mmにサイズアップ化が図られ、強烈なパワーとハードな走りにも対処している。

風倶楽部

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