GT550 1972

GT550 1972y

(リード)

国内では、免許制度の問題もありGT380が多くを語られてきた。が、GT550も同様のラムエア・システムを持ったトリプル・シリンダーで特徴付けられる名車だった。

(本文)

 GT750ではグレード感を際立てる意味でも水冷化を行い、シリンダーに対する熱処理の問題点を解決してきた。が、このクラスにあっては、コスト的にも空冷を押し切ることで対処。しかし、より一層のハイパワー化を行い商品価値を高め、販売競争に勝ち抜く為の手段とするのなら、新たな冷却システムの導入を図らなければならないと決定。もっとも重要であるシリンダー・ヘッドに重点を置いた空冷システムが採用されることとなった。

 通常、シリンダー・ヘッドと燃料タンクの間に生まれる空間を流れる空気は、冷却を効果的に行えるようなものではない。特に、トリプル・シリンダーを採用するとなると、中央シリンダーには十分な数の冷却用のフィンを設けることもできず、シリンダー温度の高昇で熱の歪みによるピストンの焼き付き生むことにもなる。

 燃料を濃くする等で対処する方法もあるのだが、嫌われる排気煙の吐出や出力特性にも影響を及ぼす部分でもあり、高出力化を図る意味でも避けたい方法だった。もっとも高温にさらされている燃焼室を、効率良く冷却できれば良い訳で、シリンダー上部を流れる空気に活力を与える為に、風の流入量を増大させ、通過するスピードをより高める方法が考えられた。シリンダー・ヘッドに開口部を広げたヘッド・カバーを設け、強制的に風の流れを生みだし、冷却効果を得る…というものだった。

 ヘッドカバーは、開口部を広くとりながらも、リア・エンドにかけて逃げ口を狭めていくといった形態が図られ、負圧を生みだすことによって流速を高める工夫がなされている。空冷のシステムとしては、もっとも優れたものではかたっただろうか。

中央シリンダーにかかる風の流入量は、冷却に必要とされるであろう通常の場合の40%が増量されるという結果が示されている。さて、GT550にはGT750同様にSRIS(スズキ・リサイクル・インジェクション・システム)が導入されており、排気煙は極めて少ない。ひとクラス上の風格を見せる4本出しのマフラーと、フロントにのみシングルのディスク・ブレーキが装備されている。

 当時60ps/7、500rpmを稼ぎ出していたカワサキ500SS(レインボー・ライン)と真っ向からライバル視されていた。しかし、50ps/6、000rpmと出力数値的には劣るGTが、走りで負けていたかというと、決してそうとは言い切れなかった。最大トルク値でも分かる通り、レインボー・マッハの5.85kg-m/7、000rpmに対し、5.50kg-m/6、000rpmとGTが拮抗し、より低回転域で発揮されるトルク特性を利しての走りは、時として優劣をつけ難いほどのものだった。

 カチッとした確実なタッチできまる6速ミッション。スムーズ極まりないエンジン回転。サスペンションのバランスも好く、軽快なハンドリングながら直進性やコーナリング時にも安定した姿勢を保ってくれる。

 ブレーキは、GT380にあった2タイプ(フロント・ディスク/ドラム)の選択はなく、効き味の好ましくないシングル・ローター仕様のみ。シッカリとした握力の必要性とともに、発生するブレーキ鳴きに多少悩まされるかも知れない。

 セルフ・スターターの装備と軽快な操縦性が人気となり、1975年モデルまで生産が続いている。最終モデルでは出力数値を53ps/7、000rpmとする。が、出来過ぎた優等生の2サイクルには、正当な評価が下されないまま、短命とも言える運命を背負うこととなってしまった。

風倶楽部

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