SUZUKI GS750 1976

SUZUKI GS750 1976y 

(リード)

1976年11月、スズキとしては1955年の「コレダCOX-1」以来の4サイクルモデルを産出。しかも、それは都合3台と言う蒼々たるラインナップとなった。GS750をトップモデルとして、GS550/GS400が同時デビューを果たしている。GS400のバランサー付き2気筒は、当時40 0ccまでの小排気量クラスにあって唯一のDOHCを採用した最初のモデル。未だ、DOHCが一般化する前の先進的なパワーユニットとなった。


(本文)

 このGSシリーズ最大の排気量となったスズキ初の4サイクル750ccは、カワサキZ750fourに次ぐ2番手の4気筒DOHCをパワーユニットとし、ライバル・メーカー3社の追撃を開始した。ホンダはCB750FourIIに未だSOHCを、ヤマハはGX750で3気筒DOHCを、DOHC4気筒はカワサキの独壇場と言う状況だった。

 スズキが当面のライバルとしたのはカワサキだった。出力値で2ps低いものの、トルク値では0.3kg-mのアップ。Zよりも低い回転域で最高出力・最大トルクを稼ぎ出している。車体寸法の較差は、Zと比べ全長で25mm長く/幅は7mm広く/高さは同じ/ホイルベースで10mm短くなっている。重量比はZ750four(1977y)の245kgに比べ22kgも軽い223kg。圧倒的に有利な対比が作り出されている。

 パワーユニットの詳細を述べると、DOHCの2本のカムシャフトは、クランクシャフト中央のカム・チェーンで作動。ヘッド部にはアイドラーが設けられておりチェーンの揺れを防いでいる。チェーン・テンショナーは、コイル・スプリングによるメカニカルのオートマチックを取り入れメンテナンスもフリー化。クランク・シャフトはニードル・ローラー・ベアリング、コンロッドはメタルによってそれぞれが支持されている。

 ボア&ストロークが65.0×56.4mmという、オーバースクエア(ショートストローク)・エンジンは、高性能を追求するばかりでなく、当時騒がれ始めていた公害対策上の問題点もクリアーすると言う優秀なもの。従来型のクランク・ケース内に残留するガスを対象としたブローバイガス還元装置に加え、カム・シャフト部の冷却効果をも兼ねて、ヘッド部に溜まるガスも一旦エアクリーナーに戻し再燃焼を促すと言った徹底的な対策が図られている。

 出力特性は、いたってフラット。しかし、穏やかと言うものでもなく、最高速度は195k m/hを越すまでのパフォーマンスも見せてくれる。フレームは標準的なダブルクレードル。だが、剛性感は当時のトップレベルと評価も高く、通常の走行レベルでは全く問題は無い。しかし、サスペンションや、ピボットにいち早くニードル・ベアリングを採用したスイング・アームに関しては、若干の不安も感じるかも知れない。それも、現代的なレベルのマシンの比ではない・・と言う程度のことであって、古きよき時代の古を知るには楽しめるものとなるだろう。

 ギア・ポジション・インジケーターや780mmの低シート高と言ったユーザー向きの安全志向も積極的に取り入れ、大型車を身近なものとしてくれたGS750。バイブレーションの少なさも特筆された部分だった。1978年4月には、GS750IIとなりブレーキ系をトリプル・ディスクにグレードアップ。フロントに244mmφのダブル・ローター+フローティング・キャリパー。リアはφ255mm+対抗ピストン・キャリパーのトリプル・ディスクを採用。キャブレターのセッティングを加速重視に変更。足まわりにも強化を与えている。

 1978年7月には名称をGS750Eに改め星形のキャスト・ホイールを与え、同年の12月には最終型となるGS750EIIが発売されている。デビュー当初はスプリンター的な色合いの濃いモデルだったGSも、僅か2年の間にツーリング指向を強めていってしまった。未だ、大型車の本格的な時代の到来とは言い難い状況だった。


GS750EII 1979y 

 ‘78年は激しいマイナーチェンジが行われ、都合3モデルが発売された。まず4月には、フロントブレーキをダブルディスク化。サスペンションのセッティングにも見直しが図られている。また、ステアリングロックがイグニッションキーと一体化されたことによる、使い勝手の向上も見逃せない。7月には、星形キャストホイールが与えられ、足まわりも軽快な印象となる。そして12月、3度目のグラフィック変更が行われ、グレード感が高められていく。正直言って、初期型はシンプルなりに軽快性があって良かった。豪華さへのイメージチェンジには、疑問が持ったユーザーも少なくなかったのではないだろうか。


GS850G 1979y 

 GSシリーズ一連の端整なフォルムで登場したオーバーナナハン。ネーミングの最後に“G”が付くモデルはシャフトドライブを採用したスポーツツアラー。ちなみに“GL”が付くと、シャフトドライブ採用のアメリカン・スポーツツアラーを意味する。国内販売されていたGS750Gの上位機種にあたる輸出専用車で、22リッターの大容量タンクをはじめ、フレームや前後のサスユニットなど、車体構成はほぼ共通。ゆったりとしたライディングポジションと中低速トルクの豊かなエンジン特性で走りはジェントル。もちろん、高速を使ったロングツーリングにも重厚で安定した性能を見せてくれた。


GS750G 1981y 

 GS750Eのパワーユニットをそのままに、シャフトドライブ機構を与えたスポーツツアラー。デビューは’79年で、エア加圧式のフロントフォークを採用するなど、ライディングフィールの方も、GS750Eよりいくぶんゴージャスな印象がする。GS750のデビュー当初(19 76y)は、スーパースポーツを意識して軽快感あふれたイメージも、日を追うごとに重厚さを増し、そのモデルとしての位置づけの様変わりを見せていく。1982年にはGSX750Sカタナがデビュー。チェーン駆動のGSX750E(GII)とともに、スポーツモデルとしての役割を終え、アメリカンモデル(GS750GL/1981y)に生まれ変わる。


GS750GL 1981y 

 GS750Gをベースに、アメリカンスタイルが与えられている。シャフトドライブ駆動のジェントルなエンジンはGからそのまま流用されており、68ps/8、500rpmの出力値でアメリカンらしからぬパンチの効いた走りも得意とする。が、なんといってもGLの真骨頂は、大柄なボディとホースバックライディングが実現する大陸的な乗り味だ。足まわりは、フロントにエア加圧式、リアにアジャスタブルサスペンションを装備し、快適ツアラーとしての性能も申し分ない仕上がり。GSXシリーズの登場後も、2バルブ系独特の低い排気音を奏でながら、国内のツーリングシーンに活躍した。

風倶楽部

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