KAWASAKI 350SS MACH-II 1971

KAWASAKI カワサキ350-SS MACH-II/1971.4.

(リード)

マッハ3が世界的にも大々的なヒット・モデルとなっていた頃、国内では有り余るパワーを持て余し気味の者もいた。未だ、十分に道路事情が整っていないままでは、スピードに関しては危険視する向きも多くあった。 実際に、マッハ3は速かった。しかし、それは、どこからでもパワーが盛り上がってくる 4サイクルの出力特性とは確かに違う。 “ここから来る!”というように、爆発的なパワーに身構えている必要もあった。が、楽しさは格別なもののようにも思えた。それは、マッハ乗りなればの優越感と言えるものだったのかも知れない。それだけに、若者たちには憧れとも思えるほどの印象を受けたに違いない。ベテランでなければ操れないという狂信めいた言葉さえ聞かれるようになってきた。

(本文)

 マッハ3の誕生から 2年、まるでそっくりのスケールダウンモデルが誕生した。「カワサキ 350SS(マッハ2)」と名称されたモデルは、当時のライバルとなるホンダCB350(36ps/10,500rpm) やヤマハRX350(36ps/7, 000rpm) 、スズキGT350(33.5ps/8,000rpm)等とは別格とも言える45ps/8,000rpm もの高出力で他を圧倒した。そのパワーユニットは、全く共通のレイアウトのピストン・バルブ 3気筒。リッター当たり130ps もの有効出力を稼ぎだすモンスター振りは、マッハ3を彷彿させるに十分過ぎるものだった。

 マッハ3と異なるのは、潤滑方式。インジェクトルーブを採用したマッハ3に対し、マッハ2はスーパールーブ方式を採用している。インジェクトルーブ自体は、A1 やA7の 2気筒モデルでも使用していたもので、複雑な形態を持っていた。が、スーパールーブでは、シンプルでより確実になっている。

 又、マッハ2には通常のポイント方式のバッテリー点火が採用。 3個のポイントがオルタネーターシャフト左側に配置されていた。ただし、レギュレーターはSVR方式とし、シリコン整流素子や半導体の特殊な性質を利用したもので、メカニカルな作動機構もなく、性能は常に安定したレベルに保たれていた。

 更に、 5速のギアボックスは、 1ダウン 4アップ。プライマリー・キックではないが、他のモデルからの乗換で違和感を覚えることはなくなった。このミッションは、チェンジペダルをリンク式とし、若干硬質感のあるもので、クラッチレバーの重さも相まって、シビアな出力特性のモデルとしては、気にかかる部分もあった。どちらかと言えば、パワーユニットは高速向けに設定されており、高回転域でのレスポンスに優れ、スポーツ性能を優先しているだけに、シフトワークには、いまひとつの改善が必要だったかも知れない。

ライバルモデルとの比較で興味深いのは、全長では最もコンパクトな2010mmながら、軸距離では最大長の1330mmを与えていること。小振りな割には比較的ユッタリとしたポジションが確保されている。全長で最も大きいホンダCB350 は、2090mmの全長に対し軸距離で1320mm。軸距離で1300mmと一番短いスズキGT350 は、全長を2030mmとしている。エンジン幅が最も広いカワサキ 350SSは、470mm を有しており、385mm と最短のホンダCBとヤマハRXからは、随分と特出していることが分かる。このパワーユニットに対し、車体のコンパクトさは、よりパワーユニットの存在感を演出しているようにも思えるのだ。そして、コンパクトな車体にして、最大長の620mm のシートを備え、リアアクスルとフートレスト間を最短の470mm で結ぶポジションは、上半身にゆとりを与え、他車よりも若干後退したステップ位置として、スポーツ走行からツーリングに至る使用にも幅広く対応できるよう配慮されている。カワサキ車の特徴となるポジションの良好さは、かなり以前からのモデルにも共通して見受けられるものだ。

 さて、実際の印象はどうだったであろう。最も印象的だったのは、その速さで、パワーユニットの出力のスムーズさとパンチ力は群を抜いていた。しかし、その速さを生かすためには、やはりマッハ・シリーズ共通のシビアなコントロール性をマスターしておかなければならなかった。公表で179km/h の最高速と、ゼロヨン13.6秒の駿足は、やはり並のモデルとは言いがたかった。

 しかし、この速さを生かしきれていなかったのは、前後のブレーキ。マッハ3よりも小振りで、効き味はあまり褒められたものとは言えない。しかし、既にマッハ3のデビューから 2年を経過した兄弟車は、総合的な面でのまとまりの良さを十分に発揮。排気音の静かなこと、操縦性のバランスの良さで、マッハ3以上の評価を受けた。

風倶楽部

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