KAWASAKI Z1000R 1982-1984

KAWASAKI Z1000R 1982y

(リード)

ローソンレプリカのベースになったのは、1981年に登場したZ1000Jだ。Z1の直系に位置するバイクだと理解されることが多いZ1000Jだが、じつは少々毛並みが異なる性格なのだ。というのもこのバイク、スーパーバイクレースに出場するためのベースマシンだったのである。エンジンスペックをよく見てみると、Z1000系の1015ccという排気量が、Z1000Jでは998ccにダウンされていることがわかる。もちろんこれは、スーパーバイクのレギュレーションにマッチさせるための変更であり、エンジン内部のパーツも大幅に変更されていたのだ。そして、このZ1000Jを駆ったのちのGP世界チャンピオン、エディ・ローソンがAM Aスーパーバイク選手権の王者を獲得したのを記念して限定発売されたメモリアルバイク、それがZ1000Rになる。


(本文)

 基本構造をZ1000Jから引き継ぎながらも、Z1000Rは大きくイメージが変わっている。エンジン全体とキャブレターにツヤのあるブラックコーティングが施され、マフラーにはカーカー製のスリムな4into1を装着。レース参戦モデルと同じ形状のミニカウルやリザーバータンク付きのリアショックももちろん投入され、スポーティ感をより高めている。

 シートは座面が深くえぐられた段付きタイプに変更され、ディンプル加工を施したシート表皮のザラ付きとともに、ただならぬ雰囲気を漂わせるようになった。なにぶん古い話であるから、現代のようにレプリカなどというカテゴリーは成立していなかったし、この手のバイクが圧倒的に高い性能を誇るまでのチューニングもしていない。しかし、さすがに半分新設計のエンジンだけあって、最高出力は102ps、最大トルクは9.3kg-mと、Z1000MK-II あたりから比べて9ps、Z1Rからだと12psもパワーアップしている。

 マシンに跨ると、まず圧倒されるのが巨大なタンクと重量感だ。乾燥重量は222kgだから、確かに現在のレベルからすれば軽くないのだが、かといってそれ以前のZシリーズはもちろん、当時のライバルモデルと比べても重いわけではない。というより、むしろ軽量なマシンであった。にもかかわらず、車重をはじめクラッチやアクセルなど、あらゆる挙動が重く感じられる。まるでマシン全体から発せられるオーラが、乗り手を選び分けるかのように…。

 そうしたプレッシャーを跳ね退け、キックペダルが廃されてセルのみになったことに安堵感を覚えつつ、ボタンを一押し。一瞬くぐもった音を発しながら、あっけなくエンジンは目覚める。この瞬間から先ほどまでの不安はウソのように、大らかで揺るぎのない頼もしさへと変わってしまう。それは、走り初めてからも途切れることなくライダーの気持ちを支配し続けるのだ。

 重厚な存在感とは裏腹に驚くほどレスポンスの良いエンジンは、意外にも低速から図太いトルクを生み出す。このエンジン特性と安定感の良さから、低中速でもリッターバイクらしからぬ扱いやすさがある。だが、ひとたびアクセルを捻りあげれば、虚ろな日常など簡単に後方へと置き去ってしまう。

 エディ・ローソンは、続く1982年にもAMAチャンピオンを獲得。Z1000Rも1983年に2型がリリースされている。このモデルはタンクシートのカラーリングが初期型から変更され、マフラーにはより一般的な2本出しが採用された。最高出力も104psと心持ちアップし、再び人気モデルになったのである。続く1984年にはGPz1100のエンジンを搭載したZ1100Rが登場。このモデルになると、もはやチャンピオン獲得メモリアルモデルという側面は消えてしまい、流麗なエアロフォルムのGPz1100に対抗する迫力満点のロードスポーツ、という位置付けになった。マニアの間では初期型と2型のみをローソンレプリカと呼ぶ傾向があるようだが、それは実は正しいとらえ方なのである。


Z1100R1 1984y

 カワサキファンの強いラブコールによって、生産中止の翌’84年には、排気量が1100ccへとアップされたZ1100Rが登場。空冷最強のパワーユニットと言われたGPz1100用のエンジンに、キャブレターを組み合わせて搭載。最高出力は一気に10psもアップ。車体の基本構成はZ1000R2がベースだが、フロントホイールを19→18インチへと小径化し、足まわりも専用セッティングとしている。もともと豪快だった走りに、ゆとりと軽快感が加わったため、快速のツアラーとしても高い評価を得た。


風倶楽部

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