KAWASAKI ZRX/EX-4/VULCAN400 1994

ZRX 1994

 今から20数年前は、ネイキッドスポーツも空冷から水冷への転換期だった。合わせて…出力規制がバイクユーザーにもたらしたのは、意とした安全への定義では無く、バイクへの意気銷沈であったのかも知れない。2サイクル車に対する排気ガスの公害対策の強化も時代の流れとして受け入れなければなら無い事と理解はしても、バイクばかりが悪役と化してしまったかの様な世間の認識が広がってしまったのは、正直…解せ無い問題でもあった。こうした社会状況の中で、メーカーも必死の開発競争を繰り広げる事となるのだが、自らのブランド車に対してもライバルモデルを生み出す展開が正しい判断なのかどうか、疑問を生むことにもなっていく。

 ネイキッド400には、一世を風靡した空冷のゼファーが依然として君臨していた。ホンダには、400ネイキッドに空冷はなくCB400Superfour、ヤマハには空冷のXJR400が存在。スズキには早くから水冷のバンディットが頑張っていた。カワサキは、ゼファーに関しての危機感を抱いていたことは確かだ。レトロ感漂うままに誕生したゼファーがユーザーの共感を想像以上に買ったことに満足はしていても、それは永劫のものとはなら無いと準備していたに違いない。

 ゼファーに続くネイキッドスポーツの400に選ばれたのは、どこか…Z1000Rの趣を醸し出したZRXで会った。ゼファーに比べ大柄に映るスタイルではあるが、ゼファーの全長2100mmに対し、ZRXは2095mmと5mm程小さい。全幅もゼファーの755mmに対し、ZRXは745mmとしてコンパクト化が図られている。これは水冷化による重量増を僅かでも抑えるための策でもある。軸距離は、ゼファーの1440mmに対し1450mmとホイルベールを伸ばし、加速時の直進性を安定方向に振ってきている。

 ゼファーの出力値46ps/11000rpmに対し、53ps/11000rpmとし、ライバル車に並びかけてきたのは当然としても、ゼファーのユーザーとしては少々面白くはない!空冷2バルブを愛しながらもZRXに色目を向けるゼファーユーザーは少なからず居たのも事実だ。僅か…7万円の車両価格差が1ps1万円の差となって現実を叩きつけられたゼファー vs ZRXの宿命対決。20年後の今、中古車市場ではゼファーに軍配が高く挙げられている。


EX-4 1994

 Z400(1974y)からの流れを受け継ぐモデルとなるEX-4も18年の歳月を経て流麗なフォルムを装うこととなった。Z400LTD(1979y)の誕生を機に世に広められ永く継承された空冷の2気筒は途絶えて久しい。が、スーパースポーツに水冷4発が全盛期に復活の息吹を見せたのには、レーサーレプリカに陰りが見え始めた兆候であるのかも知れない。新時代のベーシックモデルとは、こうでありたい…との考えで具現化されたカワサキならではの頑固な哲学が造作の各所に見え隠れしている。ブレーキは、前後にディスクを配して、意外にも活発に回る50ps/10500rpmをシッカリとした効き味でコントローラブルに作動してくれる。発売当初の価格は49万9千円。コストパフォーマンスに長けたツーリングスポーツモデルだった。


VULCAN400 1994

 あれ程までにブームを盛り上げたZ400LTDtwin(1979y)が何故にこれまでの凋落を招いてしまうことになったのか!?それは、単に本家ハーレーの伝統のV-twinに象徴される自由と言う名のイメージに凌駕されてしまったからに過ぎない!古くからの日本では、モーターサイクルを英国気質の乗り物と言う感性の捉え方で、規則正しく、規律に重んじたライダー感覚を身につけることが大事だとされていた。これに対し…自由の国と言う象徴を掲げたアメリカに存在したハーレーには、ある時期…お仕着せの規律を無縁とした無法者たちの自己主張の乗り物としてバイクが愛されていた時代があった。映画『イージーライダー』も確かにカッコ良く強烈な印象を残してくれたことは確かだ。ハーレーもまた、様々なライバルメーカーと熾烈な闘いをして唯一生き残ったメーカーだけに、アメリカンスピリッツの象徴ともて囃されたバイクとしての存在感に満ち溢れていたことは確かだ。そうした状況の中で、日本で新たなスタイルを求めカワサキで生まれたZ400LTDは新鮮な趣に映ったことは間違いない。従来からの英国風でもなく、日本人が生み出したアメリカンスタイルもまた決して間違った方向ではなかった。V-twinをモチーフとすることなく、チョッパースタイルでお跨がれる初めての試みで誕生したバイクだった。日本でアメリカンバイクのブームを築いたのは、このVULCAN400の前身であったZ400LTDtwinなのです。VULCANは、このZ400LTDを原型として活かしながらも全くの新規格で対応しているブランニュー。EX-4と同じパワーユニットを用いながらも、最高出力値を50ps/10500rpmから43ps/9500rpmとパワーダウンを図り、中低速域での出力特性の向上に寄与させている。ミッションは6速でギア比はEX-4と共通。この独特のスタイリングのジャパニーズアメリカンを悪くはないと今でも思うのだが…。

風倶楽部

バイク全般のヒストリーが中心となります。バイク好きの人たちが気軽に閲覧できるようにオープンな状態を保っていきたいと願っています。アメブロに掲載してきた記事が多くはなりますが、補足を加えていきます。

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