ホンダ ベンリイCB93-CB125 1968

ホンダ ベンリイCB93

(リード)

 ホンダ初のロードスポーツとして人気を博したCB92の場合、元をただせば、マン島TTレース用に開発されたプロダクション・レーサー(CB90) だった。そのため、いかに一般公道用にデ・チューンされていたとはいえ、持って生まれた素性はそう容易に隠せるものではなく、かなり癖の強いモーターサイクルであった。つまり、けっして万人向けのロードスポーツとは言い難かったわけで、それだけに一方では、一部のマニアに熱烈に愛されたのだった。

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 そのCB92の後継モデルとして、1963年のモーターショーで発表されたのが、正式名称CB125 、通称CB93(ホンダの社内呼称)だった。しかし、ショーの会場に展示されたCB93にはもはや、ベンスパの愛称で親しまれたCB92の面影は微塵もなかった。CB92の最大の特徴ともなっていた鋼板プレス・バックボーンフレームはパイプ製のバックボーンフレームに変更され、サブチューブ上にはCB72を彷彿させるデザインのタンクが鎮座していた。また、CB92の操縦性を決定づけていたボトムリンク・タイプのフロントフォークは、一般的なテレスコピック・タイプに変えられていた。つまり、CB93は、当時すでにベストセラーとなっていたCB72のスタイリングを踏襲していたのである。しかし、車格的には、あくまでも125 _tクラスのCB93の場合、兄貴分のCB72よりだいぶ小振りだったために、車載工具の収納スペースとして、サイドカバーの下に専用の円筒型ケースを吊り下げていたのが、スタイル上のアクセントになっていた。

 一方、エンジンは、基本的にはCB92と同スペックだったが、新たにツイン・キャブレターが採用さた点が目を引いた。こうした仕様変更は、一般的にはエンジンのレスポンス向上を意味するものである。だが、実際にCB93に乗ってみると、むしろ中低速域の扱いやすさが大幅に向上しているのに驚かされることになった。もはやCB92のピーキーさは見る影もなく消えうせ、あらゆる回転域で2気筒エンジンは素直な出力特性を発揮していた。このように低速からスムーズに立ち上がるパワーバンドを得たためなのか、CB93にはタコメーターが装備されていなかった。それに変わってスピードメーターには各ギアの最大許容速度が白線で明記されていて、ライダーはスピード計の指針に注意を払って、ギアをセレクトするという奇妙な作業を強いられることになった。ちなみに、CB93の各ギアの許容速度は、1速40km/h、2速70km/h、3速100km/h、4速135km/hとなっていた。スプリンターそのものといったCB92のエンジン特性とはひと味違って、CB93では、ロングツーリングなどで本領を発揮する快適性も加味されていたのだ。

 この辺りからも、CB93のコンセプトが窺えるようで興味深い。ピーキーさゆえにライダーにテクニックを求めたベンスパのイメージは払拭され、CB93の場合は、乗り易さにが最優先された優等生的なモーターサイクルを目指していたのである。同じスーパースポーツを標榜してはいたが、両車のコンセプトはまったく別の方向を向いていた、といえるだろう。しかし、こうした変更によって、CB93が腑抜けになったわけではない。例えば52度という深めのバンク角を使いきれれば、CB93はスーパースポーツの名に恥じない軽快な走りも披露できたのだ。

 また、当時のホンダ車の例にもれず、CB93にも、Y部品と呼ばれたチューニング用のキットパーツが用意されていた。こうしたパーツによって、CB93は、簡単に先代ベンスパの野性を取り戻すこともできた。また、どちらかといばレーシングユースを意識したY部品とは別に、当時は販売促進キャンペーンの一環として、メーカー自身によって多くのオプションパーツが発売されていた。そうしたなかでも、ロングタンクとシングルシート、それに一文字ハンドルに銀色のフェンダーなどが人気の的だった、といわれている。このようなモデファイを好んだユーザーの胸中には、常に市販レーサーCR93のイメージが存在していたに違いない。たしかにCB93は、レースで活躍したCR93と一脈通じるロードスポーツといえた。

 CB93が登場した1963年はまた、高速道路時代の幕開けでもあったが、各地に部分開通した高速道路に乗り入れるためには、160cc以上の排気量が必要とされていた。こうした事情に対応して、CB93のボアを6mmアップして排気量を161ccとした、CB95の後継モデルともいえるCB160が、同時に発表されていた。しかし、後に輸出専用となったために、国内では馴染みの薄かったこのCB160は、兄貴分のCB72よりもふた回りほど小型軽量な車体を利して、侮れない動力性能を発揮した。

 また、1967年になると、エンジンには、商用車のCD系が流用されることになったが、一応数字の上では性能の低下は免れていた。むしろ、こうしたエンジン変更の結果、車重は17kgほど軽量化されることになり、パワー/ウェイト・レシオは逆に向上することになった。このCD系のエンジンを搭載した後期型モデルは、安全性を考慮した大型ウインカー・ランプで、それ以前のモデルと用意に区別できた。

HONDAベンリ−CB160 1964

この年、オリンピックの東京大会を迎え、東海道新幹線の営業開始と、名神高速道路の全面開通が行われた。時代は、よりハイスピ−ド化に向かう中、高速道路の走行可能な基準を満たしたモデルの生産が急務となった。CB93のエンジンのボアのみを44→50mmに拡大、CB95(1958y/B&S 49 ×41mm) の後継モデルとなるが、CB93との性能差は、極わずかなものだった。それでも、有効トルクの増加と軽量なボデ−を利して、上級車を凌ぐ動力性能を発揮。上級ライダ−にあっては、CB72にも食らいつくポテンシャルを見せることもあった。

HONDAベンリ−CB125 1967

CB93(1964y) に採用されたセンタ−ドライブ方式のカム・チェ−ンは、左側にセットさせたCD系のSOHCユニットに変更。更に、出力の向上を図り搭載されている。従来の4点支持のクラックシャフトは、特殊バランサ−の採用で2点支持に改めている。この当時、各メ−カ−から250ccクラスに強力なモデルが発売され、ス−パ−スポ−ツ車の主流が移行する中、CB125は決して技術面での妥協はなかった。特筆されるコ−ナ−リング時の深いバンク角とその安定性は、CR93のイメ−ジをそのままに、素晴らしい印象を残してくれた。

HONDAベンリ−CB125 1968

この年、CB/CL系にツ−トンカラ−の鮮やかなモデルがバリエ−ションに加えられる。CB125は、タンク形状の変更、サイドカバ−、フェンダ−、シ−トが一新され、よりスポ−ティ−にアレンジされている。ミッションは、4速→5速にグレ−ドアップ。軽快な走りが強調され、更に楽しめる様になった。エンジンは、圧縮比を9→9.4に高め、最高出力を従来の12.5ps/10,000rpm→15ps/11,000rpmに、トルクを最大値で0.91kg-m/8,500rpm →1.05kg-m/9,000rpmと大幅に向上させている。CB92(1959y) の15psとは特性で大いに異なる。

風倶楽部

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