KAWASAKI 500SS MACH-III 1973-1975

KAWASAKI カワサキ500 SS MACH-III H1D/1973.1.

 新たに350 S2 Tと同じデザインのテールカウルを350に先立って配し、従来からのセンシティブな印象を一新したH1がデビューした。

 バッテリーCDIをマグネットCDIに転換して始動性を高め。キャブレターの変更により出力特性にも改善を図り、出力も僅かに1psダウン。ホイルベースを1,400 →1, 410mmにプラス10mm延長させ、直進安定性を高めてのデビューとなった。このあたりの変更は、1972年8月と1973年4月に相次いでデビューした4サイクルのスーパースポーツZ 1とZ2の存在に影響されたものとも言えなくもなかった。公害問題に意識が高まりつつある社会にあって、4サイクルとの比較がとりざたされるようにもなってきたからだ。2 サイクルにおいての燃費の改善手段がなされる以前のことで、出力の低下という尋常とは思えない方法での生き残りが2サイクルには課せられていた。又、スピードに限って言えば750 SSに優位性があり、500 SSにはかつての象徴的なイメージは既に失われていた感もあった。こうした経緯の中で、500 SSの生き残りに賭けた変貌が始まった訳だ。

 ランプステーやフェンダーは前後メッキとなりガソリンタンクのキャップもキー付きが採用。シートロックやキルスイッチも新設されていた。変更点は他に、キャブレター(VM28φ)のメインジェットのサイズダウンや点火時期にも及び、プラグは沿面タイプ→H 2と同じB9 HSの通常タイプに変更し採用。ホイルベースの延長の他、全幅は5mm短縮、全高は30mmアップ。キャスターは61°→63°に延長し、トレールは2mm短縮して108mmと設定変更を加えている。更にリアブレーキを従来のワイヤーからロッドへと変更。マニアックな指向を廃し、操縦安定性を高めて幅広いニーズにも対応改善が図られていく。


KAWASAKI カワサキ500SS MACH-III H1E/1974.01

 Z1と同じカラーコーディネイトが行われた74年型でマッハ-IIIのネーミングが付けられていた最期のモデル。

 主な変更点は、点火系にマグネット+CDIの採用、エンジンをラバーマウントに、潤滑系統にH2Bにも採用されていたチェックバルブを新設、他に足回りやフレームにも改善を受けている。H2が既に国内市場から撤退してSS系のトップにランクされるモデルとなった。が、市場の動向は急速な転換期を迎えていた。隆盛を究めたマッハに既にトップリーダーとしての活力が見いだせなくなってきていた。Z1のデビュー、オイルショック、免許制度の変革等々、個性的だった出力特性も控えめにマイルドさを強調。パワー優先をより濃く印象付けていたフレームやサスペンションも、熟成化という進歩的な表現を用い完成された車体を構成し始めていた。

 10年一昔というセンテンスも、今や5年一昔の様相を築き始めていくほど時代は急速に成長への加速を強めていった。完成された500SSを既に「マッハ」とは呼べなくなったユーザー達は、次のヒーローを求めて模索し始めていた。しかし、マッハの強烈なイメージを焼きつかせた「エグリタンク」ではなくとも、H1Eにも、スプリンターとしてのトップのポテンシャルが失われていた訳ではなかった。ブレーキ性能を高め、フレームとサスペンションのバランスが調整された500SSには、ライバルを一喝するに相応しい実力があった。話題や人気に先行しがちな新規のユーザーとは別に、マッハに熟練したユーザーは、この快適さを純粋に楽しんでもいた。前が開いてからでないとアクセルを自重せざるを得ないもどかしさは、マニアックな喜びとして大切に残しておくとしても、H1Eは、ピストンバルブの2ストロークのトリプルを満喫するに相応しい仕様が施されたモデルでもあった。

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KAWASAKI カワサキ500 SS H1 F/1975.

 500 SSとしての最終モデル。H1 Eからの変更点はカラーリングのみで、ブレーキのマスターシリンダーに透明なプラスチック製が採用されているのが唯一の特徴となる。既に輸出専用車となっているH2と同一パターンのタンクグラフィックを採用しており、40 0/250含めシリーズ最後のフルラインナップを果たしている。1976年より、シリーズが全てKHと変更されるに従い、H2は生産ラインからも撤退。マッハの軌跡に色濃い影が映り込むようになってきていた。H2は最期の年、潤滑系統に明らかな改善を図られていた。このH2 Cには、混合気とともに燃焼室に送り混むべくフロートチャンバーに直結するオイルホースが設けられており、従来型のインテークマニホールドへのオイルラインは廃止。更に、フライホイールの形状変更により一次圧縮を下げられる等、2サイクルの宿命とも言うべきオイルの消費や白煙にも徹底した対策がほどこされてもいた。

風倶楽部

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