KAWASAKI 750RS Z2 1973

KAWASAKI 750RS Z2 1973y

(リード)

先に、海外向けとしてデビューを果たしたZ1のモンスター振りを遠目で追いながら、日本では、デビューを間近とし_ス750ccのZにファンは待望していた。マッハ㈽に端を発した「最速モデル」へのカワサキの挑戦は、4サイクルへと転換しても途絶えることなく、Z1を憧れのバイクとする熱狂的な信者が生まれていた。そんなユーザー達の熱気が頂点に達した頃、Z2は、Z1のイメージをそのままにして発売された。Z1の発売(1972y.8)から遅れること6ヶ月後、1973年2月のことだった。

(本文)

 Z1のパワーユニット開発の以前に置いて、既に完成の域に達していたとさえ言わしめた750ccエンジン。このエンジンにとって不運だったのは、1968年10月の「東京モーターショー」にデビューしたホンダCB750fourの存在だった。カワサキは、急遽排気量の拡大を検討して900ccへと方向を転換。世界的商品の開発を目的にスタートした経緯によって、750ccエンジンは、一時開発を見送られることとなってしまった。

 迷走するカワサキは、1967年のスタートから6年の歳月を費やして待望の750ccエンジンを国内に送り出すことが叶った。 Z1のシルバーとは異なったブラック塗装のパワーユニットは、シリンダー・ヘッド・カム軸カバーの一端だけをバフがけしてツイン・カム(Twin-cam)であることを強調。エンジン外寸はZ1と変わらず、この場合通例としてZ1のボア・ダウンを強いられるのである。が、Z2では更に複雑な改良を行っている。

 シリンダー・ボアは、シリンダー内にスリーブを置き、内径差で2mmを圧縮。ストローク値の変更は、フライホイールのコネクチングロッドのビッグ・エンド(大端部)のセット位置を、クランク軸中央より4mm短縮して実現している。回転半径で4mm差を与えたクランクが一回転すれば、コネクチングロッド小端部では上下寸法にして8mmのストローク差が生まれることとなる訳だ。キャブレターは、Z1のVM28C→VM26SC、クラッチ・スプリングは約15%の強化がZ2には行われている。ホイルベースの違いは、Z1で1,490mm/Z2で1,500mmとある。が、これは採用する最終減速比の違いから生じたもので、Z1の4.92/Z2の5.90というスプロケット径の差による。以上が、Z1とZ2の違いである。 

 一卵性双生児のZ1/Z2は、瞬く間に世界中を駆けめぐることとなった。Z1のデビューから2年6ヶ月後には、Z1を7万5千台。Z2のデビューから1年10ヶ月後には7千台を売り切っており、Z2に至っては、デビューから2年を経て尚も月産で3,500台と売り上げを伸ばしていった。

 Z2の人気は、やはり絶大な加速感に尽きる。レッドゾーン(9,000rpm)を越えても出力落ちは少なく、1速/10,000rpmで80km/h、2速で120km/h、3速で155km/h、4速で190km/h、5速では200km/hをオーバーする勢いである。但し、当初疑われていたフレームの弱さに関しては、高速走行時に、多少リア・サスを堅めに設定し直してやりさえすれば安定感も増し、車体に関する不安も少なくなることを付け加えて置く。

 Z1然りZ2のレバーも又外人向き、チェンジ・ペダルも日本人向きな小足にジャストフィットしない、燃費も悪い・・等々、悪態を付かれながらもZ2に心頭する若者は次第に増えていった。初期型にある低速回転時の息つきは、点火時期の調整を行い、自動進角装置の進角範囲を、1,500rpm時5°・3,000rpm時40°→1,500rpm時20°・2,350rpm時40°に改良。同じく、初期型にあったシリンダーヘッドとシリンダー間から発生したオイル漏れに関しても、シリンダー・ヘッドガスケットをカムチェーン・トンネルにOリングを介したセパレート・タイプに変更して対処。チェーン・オイルのポンプに関する苦情もあり、途中二度ほどパーツ変更も行われていく。苦情がZ2に限って発生したと言う訳ではない。が、ユーザーのZ2に対する評価は厳しかった。

 そこには同時に、期待の大きさも伺わせるものもあった。スタイリングといい、メカニカルな部分の強調といい、性能もピカイチとくれば誰もが欲しくなるのは当然のこと。1977年、最終モデルとなるZ750four-D1まで、グラフィックの変更を受けながらも、一貫してその優雅なスタイリングを守り通していった。フロント・ブレーキにツイン・ローターを標準装備した1976年4月発売のZ750four-A4からは、出力も69ps/9,000rpm→70ps/9,000rpmにアップ。但し、同じ年の9月に発売したZ750four-A5からは、180km/hの速度リミッターを義務づけられたことで、RSにもやや販売上の陰りが映し出されるようになってきた。やがて、次の時代へZ神話を引き継ぐモデルの誕生がささやかれ始めていく中、Z1/Z2に心から陶酔した若者の多くは、新しい方向へは目を向けなくなり、熱狂的なバイク・エンスーの道へと導かれていった。


750RS 1974y 

 この年の1月、デビューから初のマイナーチェンジが図られたZ2A型が登場。グラフィックの変更と唯一の欠点であったバッテリーのオーバーチャージング。さらに、シリンダーヘッドのガスケットを従来の1枚ものから、分割タイプとして、耐久性のあるOリングを追加している点も見逃せない。耐久性に関しては、定評のあるゼッツーだったが、慎重には慎重を期しての体制は、カワサキのこのモデルにかける信念を伺えさせられる。さらにこの年の8月、カラーリング&グラフィックが再度変更、テールカウルのストライプが直線から曲線に換えられる。この頃が、いわゆるゼッツーの人気のピークだった。

 Z750FOUR 1976y 

 フレームや足まわりに改良を受け、より完成度を高めたZ750(A4)。高速モデルとして印象度を高めたZ2にも、多少の問題点がなかったわけではない。ストレートや小さなコーナーでは十分な動力性能を持ちながらも、高速コーナーやその切り返しとなるS字では、ハンドルが振られる現象も起こった。フレーム剛性不足も一部のライダーに指摘されていた。もっとも、これにはそれなりの剛腕ライダーでしか確かめようもないことでもあった。だが、現在の優れたフレーム構造にバランシングされたパワーと見比べれば、当時の750 クラスは、まさにエンジンが先走りしていたという感じは否めない。これも、今となっては懐かしいテイストともいえる。750RSからZ750FOURと改められた名称を好むと好まざるは別にして、マシンは常に改良の手が入れられ成長している。Z750FOURには、フロントに有効径245mm/厚さ7mmのステンレス合金のディスクプレートをダブルで装備。出力値を僅かだが1ps向上させている。メーター読みで220km/hを示そうかという高速モデル。やはりただ者ではなかった。


Z750FOUR 1976y 

 Z750FOUR(A4)へと改められた前作から、わずか4ヶ月後の同年8月に発売されたA5型。外観上の違いはカラーリングのみだ。が、180km/hの速度リミッターとセーフティ・スターターシステムを新たに採用。乾燥重量も初代のZ2に較べ、230kg→236kgまで増え、ワイルドな印象はやや影を潜めてしまった感もある。これは、ナナハン・ブームの影響により、にわかナナハンライダーの事故が目立つようになっていたという社会背景を考慮しての処置でもあった。


Z750FOUR 1977y 

 Z750FOURの最終型で、型式名称はD1タイプとなる。国内モデルにあって、750ccクラス初のDOHCを採用するなど、躍動的なフォルムと群を抜く動力性能で、依然として高い人気を誇っていた。パワーユニットに変更はないものの、操縦性の向上が図られ、各部の改良が行われている。キャスター角を26°→25.5°、トレールは90mm→87mmに変更。フロントのディスクキャリパーもアウターケース後方に配置し直されている。さらにリアブレーキをドラム式(内径200mm×35mm_jから、ディスクタイプに変更。スイングアームピボットをZ1000と同じ、ニードルベアリングが組み込まれている。チェーンもZ900から流用したグリス封入式が与えられた。

風倶楽部

バイク全般のヒストリーが中心となります。バイク好きの人たちが気軽に閲覧できるようにオープンな状態を保っていきたいと願っています。アメブロに掲載してきた記事が多くはなりますが、補足を加えていきます。

0コメント

  • 1000 / 1000