KAWAKI KH400/KH500/KH250 1976

KAWASAKI KH400 A3 /1976

 1974年、350SS から継承したパワ−ユニットをベ−スに、ボアを4mm アップした400SS がデビュ−。マッハ3のサブネ−ムを残しながらも、印象はややマイルドな方向へと転換させられていた。そして新たに誕生したKH400に関して言えば、KH500 同様のパワーユニットもまた、中速重視の設定になり、400SS(1974y) よりも更に4ps のパワーダウンが図られている。KH500 に残された0 →400m加速12.4秒というマッハの血統を伺わせるデーターは、このKH400 にはなく、かつての350 SSのスプリンター的な動力性能はすっかり鳴りを潜めてしまっている。但し、誰にでも安心感を持って軽快なトリプルシリンダーの吹け上がりが楽しめるようになったことは歓迎すべきことで、新世代のユーザーにあっては、あのかつてのマッハの栄光を、ささやかにではあっても堪能することはできた。ライバルとなったのは、スズキGT380 やヤマハRD400 。4 サイクルではあってもSOHC4 気筒を誇らしげに搭載したホンダCB400four 等であった。


KAWASAKI KH500 A8 /1976

公害対策が社会的な問題となって取り立たされてくると、2サイクルに対する風当たりもきつく、よりクリ−ンな燃焼が可能な4サイクルに追い風が吹く様になってきていた。特に、大排気量モデルにあっては4サイクルが主流となり、2サイクルはもはや栄光を軌跡の中に記すだけとなっていた。500SS もすっかり穏やかな出力特性が与えられ、ス−パ−スポ−ツ・モデルの硬派な印象は、既にバイクユ−ザ−の視点からも外されていた。しかし、鋭い牙を落としながらも、バイブレ−ションとベアリングノイズを伴いながらの加速は、フロント荷重の軽いハンドルと共にKH500 に残された、あのマッハの最期のスピリットを感じさせていた。エンジン機構は、マッハと同じピストンリードバルブ・エンジ。但し、吸気ポートの形状を変更されて、大幅にキャブレーションセッティングを変えたトリプルシリンダーは、もう以前の様な暴力的な加速は望めなくなってしまっていた。キャブレターを大径化しようが、ポートを拡大しないかぎりは、あのジャジャ馬としての本能を目覚めさすことはできなくなっていた。しかし、軽いハンドリンと共に、あのバイブレーションとベアリングノイズを伴いながらの加速感は、著しく抑えられているとは言えこのKHにも残されていた。KHへの変更で大きな変更点となったのは、これまでボトムニュートラル式だったミッション。今回からは、一般的な1ダウン4 アップのリターン式にシフトパターンが改められている。500SS(1975y)から 7psダウンの出力に、エキゾ−ストノ−トも何か寂しげな響きを奏で、ライダ−も又ジェントルなライディングを心掛けることとなった。KH500 を最期に、マッハのパワ−ユニットは完全に栄光の彼方へと遠ざけられてしまった。


MAWASAKI KH250 A5/1976y

 250ccクラスで唯一のマルチシリンダーを採用しているKHは、兄弟車の劣勢にも惑わされることなく、このクラスでは他の追従を許すことなくの優位性を保っていた。250SSからの変更点で目についたのは、フロントに配したディスクブレーキ。フロント部分は、フォークやアルミのボトムケースまで、そっくりKH400のパーツが奢られているほど強化されていた。全長は2,085mm/全高は1,130mmとそれぞれKH400と共通ではある。が、軸距は400の方が10mm短い1,365mmとなっていた。実際このKH250には400や500といったパワーユニットを搭載することも可能であったから、どこか危険な発想を持つユーザーには好まれていた。

 この年から、カワサキの2サイクル・トリプルシリンダ−“マッハ・シリ−ズ”は、これまでのS1/S2/H1/H2 ・・の名称を統合。全て「KH」に変更されている。正直なところ、マッハのインパクトは、強烈な特性から受ける個性的な印象に継承されていた筈だった。しかし、技術の進化と共に穏やかな出力特性を与えられたモデルに、もはや“マッハ”の呼称は似つかわしくなく、新たなカワサキ2サイクルスポ−ツの統制が図られることになった訳だ。タイヤは、フロントが3.00-18 →3.25-18 、リアが3.25-18 →3.50-18 へとサイズアップ。サスペンションも衝撃吸収性の向上が図られ、従来よりもソフトなセッティングが与えられている。パワ−ユニットは、250SS の初期型から較べれば32ps/8500rpm→28ps/7500rpmとパワ−ダウン。やはり、中低速域での出力向上が行われている。高回転域での出力発生に頭打ち感はいなめない。停止時には1速にしかシフトできない機構や、走行中、電装の一系統に故障が生じても、残り2系統が保守する3回路ヒュ−ズ等、ユーザーにとっては好ましいと思える独自の安全機構は伝承されている。

風倶楽部

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