KAWASAKI Z1R 1978

Z1R 1978y

(リード)

Z1Rの型式名称は「KZ1000D」。つまり、Z900をスープアップして誕生させたZ1000(1977 y)をベースとしたスポーツモデルであることが理解できるはずだ。同じ仕様のパワーユニットながら7psものパワーアップが図られているのは、KZ1000のものから2mmφアップの28mmφのキャブレターと4into1のマフラーの採用によるものと明確に判断できる。

(本文)

 このパワーアップされたKZ1000Dが、さらに改良されているのは、フレーム補強とダンパー&スプリング共に強化されたリア・サスペンション・ユニット。乗り心地などというレベルを語らせない個性的なセッティングが成されている。

 ライディング・フォームは、やや前傾を強いられ、否応なしに挑戦的な気持ちを擽られることとなる。しかし、大径キャブが生みだす出力特性は、決して気難しいものではなく、低回転域からも図太いトルク感を伴っていて、扱いは意外に思えるほど容易い。レッドゾーンの始まる8,500rpmまで、ストレスなく回転が上昇していく。パワーがより一層の活性化を伴うのは5,000rpmを過ぎてからで、多少のバイブレーションも、この辺りから高まる。6,000rpmを過ぎてからはバイブレーションも減少して、4速までなら10,000rpm辺りまでは回せる。

 トップ・スピードは、メーカー発表で218km/hとある。が、とても一般道で試す気にはなれない。ちなみにメーカー発表の0→400m加速は11秒8とある。が、簡単に誰もがコントロールして出せるものでもない。しかし、サーキットのように限定されたコースであれば、ゼロヨンで12秒前半台、最高速度で200km/hオーバーは誰にでも可能なものにしてくれるはずだ。 

 さて、一般道路での使用感はどうだろうか。深いバンク角は峠でも効果を発揮する。が、ハンドリングは決して軽快性がアピールされてはおらず、小さなコーナーが得意とはされない。が、箱根の「ターンパイク」のような登りのきつい大きな高速コーナーでは無類の強さを発揮してくれる。

 ブレーキは、前2・後ろ1のトリプル・ディスク。ドリルドディスク多孔式のローターは、このモデル専用のデザインが成されており、使用上も非常に優れた効果を発揮してくれた。ソリッドな独創的なスタイリングと、ずば抜けた高性能は、一般のユーザーにばかりでなくレースという限定されたジャンルでも注目を集め、当時の世界各国で行われていたスーパーバイク・レースや耐久レースでも活躍。

 1979年のル・マン24時間ではシルエット・ノーマル・クラスで優勝する等、輝かしい記録も生みだしている。決して、形ばかりではなく、性能に裏付けされたスタイリングが映し出す美しさは、このモデルならではのもの。

 13リッターというリッター・バイクには釣り合いのないガソリン・タンク。スリム化のために、キック・アームを取り外してシート下に納める等徹底した工夫を用い、このモデルを一際個性的に見せたカワサキは、世界の大型車市場に自社の存在を存分に知らしめることに成功。Z1以来の伝統を着々と築き上げていった。

 1979年型では、ベースモデルをZ1000Mk-II に変え、パワーユニットも全面的に変更。出力は更に94ps/8,000rpmにアップ。キャスターは26°そのままにトレールを85→101mmに拡大して、操縦性に柔軟さを与えている。ブレーキ・ローター&キャリパーも、Z1000Mk-II と共通部品を使用。車体構成に何らZ1Rらしき特徴が見受けられなくなってしまった。Mk-II ベースは確かに速くなった。エンジンのピックアップも良くなった。が、優れていく性能と共に薄れていく個性が感傷的なものとなっていく。この後、性能を優先とする時代に拍車がかかる頃となる。が、時代を映し出した名車には、いつの時代になっても輝かしさが失われることはなかった。


カワサキZ1-R

排気量クラス 大型自動二輪車

メーカー 川崎重工業

ブランド カワサキ

製造期間 1977年

フレーム 鋼管ダブルクレードル

エンジン KZT00DE型型 1015cc

空冷4ストロークDOHC2バルブ並列4気筒

内径x行程 / 圧縮比 70mm x 66mm / 8.7

最高出力 90ps/8,000 rpm

最大トルク 8.7kg-m/7,000 rpm

駆動方式 チェーンドライブ

サスペンション

前: テレスコピック式

後: スイングアーム式

ブレーキ

前: ダブルディスク

後: シングルディスク

全長x全幅x全高 2160mm x 800mm x 1295mm

車両重量 246kg

乗車定員 2人


Z1R-II-D3 1980y

 1979年のR-II(D2)で、それまでのZ1RでベースモデルとされたZ1000A2(83ps/8、000rpm)を、Z1000Mk-IIベースに変更し、出力も90ps/8、000rpm→94ps/8、000rpmに高められている。’80年型ではカラーリングのみの変更となり、次期モデルZ1000R/1982y(ローソンレプリカ)へのバトンタッチを果たしている。リッターバイクとはいえ、こと出力面での扱いやすさはナナハン以上に手軽。硬めのサスペンションはハイスピードでのコーナリングで、少々手こずることもあるが、元々ハードにコーナーを攻めるモデルではない。


カワサキ・Z1R-II

排気量クラス 大型自動二輪車

メーカー 川崎重工業

ブランド カワサキ

製造期間 1979年-1980年

フレーム 鋼管ダブルクレードル

エンジン KZT00DE型型 1015cc

空冷4ストロークDOHC2バルブ並列4気筒

内径x行程 / 圧縮比 70mm x 66mm / 8.7

最高出力 94ps/8000rpm

最大トルク 9.2kg-m/6,500rpm

始動方式 セルモーター・キック併用

燃料供給装置 キャブレター (ミクニ・VM28SS)

変速機 5速リターン

駆動方式 チェーンドライブ

サスペンション

前: テレスコピック式

後: スイングアーム式

ブレーキ

前: ダブルディスク

後: シングルディスク

タイヤサイズ

前: 3.25V-19

後: 4.00H-18

全長x全幅x全高 2218mm x 805mm x 1290mm

キャスター / トレール 26.0度 / __

車両重量 250kg

乗車定員 2人

風倶楽部

バイク全般のヒストリーが中心となります。バイク好きの人たちが気軽に閲覧できるようにオープンな状態を保っていきたいと願っています。アメブロに掲載してきた記事が多くはなりますが、補足を加えていきます。

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