KAWASAKI Z1300 1978

Z1300 1978y

(リード)

水冷4サイクルDOHC2バルブ6気筒・・このモデルを最適に表現するには、スペックで語るのが相応しいのかも知れない。ホンダが、前年(1978y)にデビューさせたCBXの空冷6気筒の存在感ほどではないにしろ、パフォーマンスに壮大なスケールを感じさせるに十分なスーパーバイクがZ1300だった。120ps/8,000rpmは、勿論当時としては最大級の出力値で、世界に類を見ないスーパーバイクの出現となった。

(本文)

 巨大なパワーユニットは、メインチューブが44.5mmの極太パイプからなるダブルクレードルでガッシリとホールドされ、駆動系には頑強なシャフトドライブが与えられている。サスペンションは、フロントで200mm・リアで105mmのストローク量を持つコンベンショナルな2本ダンパーが採用されている。どちらかと言えば、ソフトなセッティングで、低速走行では重量に負うところが多いせいか安定感に欠ける。が、高速になるに連れ安定感が高まり、200km/hになっても安定感に揺らぎはなかった。

 エンジンは、CBXのようなシャープさはなく、高回転域で楽しむ味付けはない。かと言って、トルクの塊というような個性的な面はなく、ビッグ・バイクをコントロールし易いように出力特性が作り出されている。スムーズであることが大前提として、あえてキャブレターはミクニのBSW32×3を採用。エンジンのスムーズさは確かなのだ。が、気になるのはリアに伝わるパワーにタイムラグが生じること。駆動系に多くのダンパーを用いるシャフト・ドライブであることを思えば止む終えないことなのだろう。

 そしてもう一つ、シフト・ショックが意外に大きく思えるのも、このモデルの特徴。加減速時にはアクセルを煽らずに一定に保ち、クラッチを切る量に加減を加えタイミング好く効かせてやれば、かなりスムーズさが増すはずだ。実際、このモデルで過激な走りをする訳でもないのだから、スプリンター的な操作性を求めるべきではない。バンク角も少なく、300kgを越すボディに軽快性を求める方が無理。

 ブレーキは、低速走行時にフロントがロックし易く、高速になるに連れコントロール性は高まってくる。コーナリング中のフロント・ブレーキ使用では、急激な起きあがりをもつクセもあるので要注意。リア・ブレーキに関しては、低速時のコントロール性もあり、制動力ともに問題はない。

 少々問題点の多くを語りすぎてしまったようだ。が、ビッグ・バイクに求められるユーザーのニーズが、間違った方向に傾向していくことに気がかりな点もあるのだ。パワー優先でバイクを選んだり、人気モデルに傾向していくことも分からない訳ではない。が、ビッグ・バイクには、余裕ある気持ちを持ってライディングを心がけて欲しいと思っている。余りあるパワーを使い切って・・、重量車を体で押さえ込んで・・等と、気負った気持ちは逆に跳ね返されることとなることの方が多い。限界性能を追求して仕立てられたレーシング・ライクなモデルならまだしも、Z1300には、凛々しいライディング・フォームの方が似合う。

 最大排気量、最大出力値を誇ってはいても、Z1300には悠然としたフォルムに適うツアラーとしての位置づけがあった。200km/hオーバーを軽々とこなし、安定した高速性能をもって走り続けることができるモデルだった。ヨーロッパ向けの27リッター・タンクに比べ、アメリカ向けには21.4リッター・タンクが用意。決して誉められぬ燃費に関しては、10~14km/Lとだけ記しておく。

 1980年、スロットル・ワイヤーの取り回しを改善。1982年には、トランジスタ点火に改良し、イコライズド・エア・サスペンションをリアに採用。1984年、フューエルインジェクションに転換して出力も130psにアップした。約10年の歳月は、ビッグ・バイクとして決して短いものではない。モンスター・バイクとしてパワーユニットを強調したCBXが僅か3年の期間を経たに過ぎなかったことを思えば、Z1300の永きに渡る支持は、納得のできるものだった。モンスター・マシンの心臓部を持ったZシリーズ最大級のド迫力マシンは、グランド・ツアラーとして最後まで紳士的なフォルムを押し通していった。


Z1300 TOURING 1980y 

 Z1300をベースに、大型カウリングやパニアケースなど、ロングツーリングに必要な装備を施した大陸的な超ビッグツアラー。もともと巨大だったZ1300に豪華装備を満載したことで、381kgというとんでもない超重量級に仕上がっている。’83年には、デザインが一新されたのに加え、フューエルインジェクションの採用やボタン操作で調整が行える前後エアサスペンション、トリップコンピュータ、高性能オーディオシステムの装備など、ルックスも乗り心地もさらに豪華に進化。型式がNZに変わり、車名もボエジャーへと変更。


VOYAGER-XII 1986y 

 Z1300ベースの初代ボエジャー(‘83~’85)があまりにも巨大すぎたため、新たに水冷DOH C4気筒・1200ccエンジン搭載のコンパクトモデルを開発。とはいえ、そこはキングサイズの大陸ツアラーだけあって、乾燥重量は317kgと重量級。しかし、ライバルよりは数十kgほど軽く仕上がっていた。初代で培った快適性の高さ、圧倒的な巡航性能の頼もしさをそのままに、取りまわしやメンテナンス性が飛躍的に向上しているのが最大の美点。させている。オフセットだったフロントフォークもノーマルなセンター式へと変更されるなど、ハンドリングに軽快性を与えている点にも注目。

風倶楽部

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