KAWASAKI ZXR750/750R/ZXR400/400R/ZXR250 1993

ZXR750 1993

 1989年の発売以来、例年のごとく改良が加えられて鋭さを増してくる様は、量産車としての枠を超え…市販レーサーの如く競争レベルを高められていく。この年の大きな改良点は、カウル形状にある。空力特性の改善ばかりでなく、空力を得て過給効果を高め、出力特性を更に力強くしようとの狙いがある。実際に数値上に表されているのは、圧縮比が10.5から10.8に高められ、この結果最大トルクが6.7kg-m/9500rpmから6.9kg-m/7000rpmと大きく特性が改められている。ホイルベースは、1455mmから1430mmに短縮。外観上のイメージのシャープさは、走りの面でも生かされて乗り味も大きく変わってきている。全面投影面積を減少させるために、前年までのモデルにあったエアダクトが無くなりハンドル回りもすっきりして好印象。フレームやサスペンション剛性も大幅に改善されたばかりか、サイレンサーもリファインされている。

ZXR750R 1993

 スポーツプロダクション仕様を精力的に販売してきたZXRシリーズに、この年は大きな変化が起きた。従来のTT-F1選手権が市販車により近いスーパープロダクション仕様で開催されることになったのだ。その為に…ノーマル車と同じに見えても、殆どの部品がレース用にモディファイされたモデルが必要となってしまった。公道走行が可能とはなってはいるが、市街地ユースではかえってノーマル車の方が扱いも容易く速さも光るだけにZXR750Rに関しては一部のマニアックなユーザーかレース参加者のためだけのモデルということになる。

ZXR400 1993

 カワサキらしからぬ大胆なグラフィックに彩られ、よりスタイリッシュに生まれ変わっている。残念なのは、この年から400ccクラスの馬力規制が導入されてしまったことである。もちろん、これはお役所の決めたことであるからメーカーも従わざるを得ないが、何をどう規制しようがユーザーは好みに応じて変えたいものは変えたいと衝動は止められない。また、メーカー側も黙って規制に従うだけでもない。数値上の規制は守るも…出力特性を中速域の増強に当て、加速感を高めてきている点に工夫がうかがえる。59psから53psへと大幅なスペックダウンも、実際には不満に感じることなく93年モデルを先進化させている点は好ましい。先代のモデルに見受けられた…ある意味カワサキらしさは次第に薄れ、洗練されたハンドリングとシルキータッチのエンジンフィーリングが活かされ始めている。

ZXR400R 1993

 スタンダードモデル同様に出力規制を受けながらも、400Rには高速型のカムシャフトやCRキャブ、更にはクロスレシオのミッションや調整式の前後サスペンション等SP用のスペシャルパーツが存分に生かされて搭載されている。価格は、スタンダードモデルの73万9千円から10万円アップとお手頃のお得感も見逃せないものでもあった。

ZXR250 1993

 カラーリング変更を受けた以外主だった変更点は、出力規制によるパワーダウンでしかない。実際に、このクラスのモデルは、国内4社何処にあっても拮抗した高性能化によって、技術的には行き着くところまで来たとも言える達成感もあり、技術的な改革よりも操縦安定性を重視した改善に目を向ける時期に来ていたのかも知れない。’91年モデルの45ps/16000rpmから40ps/15500rpmへのパワダウンと共に、最大トルク値も…2.5kg-m/11500rpmから2.3kg-m/11000rpmへと少々か細くなったことで、高回転域への頭打ち感が出てしまったことはユーザーサイドにあっては残念なところだろう。ZXR400の出力規制には違和感をさほど感じることは無かったが、250ccクラスの排気量差を思えば致し方ないものなのかも知れない。

風倶楽部

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